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秋山 幸 展 一Home一|天プラ・セレクションVol.104

  • 2 日前
  • 読了時間: 7分






私が6歳の時に祖父が亡くなった。生前、画家で小学校の校長をしていた祖父にとって、忙しい日々の中で時間を見つけ自分のアトリエに通うことが、かけがえのない時間だった姿を幼いながらに肌で感じていた。祖父のいない、アトリエに残された絶筆の油絵を初めて触った。チューブから出た絵の具と溶き油が混じり合い固まり、その独特の硬さに驚いた。イメージを乗せた絵の具が形を変えて空気と化学反応を起こし、キャンバスに永遠に定着している様子が今絵を描いている私の原風景のようにインプットされている。


真夜中の内モンゴルの暗闇に一人立った時も、愛猫が老衰で目の前で死んだ時も、娘が生まれた時も、いつも身体という存在を感じた。肉体を意識して目の前のことに対面することがテーマであった。

意識が近づいたり離れたり、見ている風景の山頂と私が立っている地面の下はつながっていること。自分に関係ない遠い場所に、食べ物や文化を通してつながっていること。絵を描くことは、ピンと張られたキャンバスが地面やテーブルや皮膚のように広がっていて、その上に絵の具でビルドし、地面を掘り、空から俯瞰してみることを同時にやっているような作業だ。内なる想像と物質の存在を共存させることができるHomeのような場所であり、新たな創造の起点となっている。


秋山 幸





Exhibition Review

秋山幸さんの作品は、音や匂いや温度のある空気に包まれている。

目で見ているのに、指でなぞっているような感触まで伝わってくる。


2013年の第6回「I氏賞」選考作品展の会場で、秋山さんの大作《庭のモンスーンと庭》に出会ったとき、油絵の具の艶やかで厚みのある色層の美しさと滲みや透明感を生かした表現のゆたかさに魅了された。この夏、また同じ場所で再会した彼女の近年の作品には、さらに自由で繊細な表情があり、絵の前を離れることができなかった。


このたびの「秋山幸展 一Home一」には、日々の制作の様子をうかがうことのできるドローイングが、多数出品されている。新聞記事や広告の言葉や形の中から、彼女自身との距離が近いと感じられるものをピックアップし、描き留める行為の繰り返し。紙に水彩という即興性のあるスタイルで、メモ代わりに続けることが、絵画への翻訳・変換のトレーニングになるという。コロナ禍でロックダウンとなったニューヨークで、日記のように綴った数多のドローイングは、彼女が描くことと、生きることのつながりを、より親密で確かなものにした。


私たちの日常は、《Yellowish flowers》に描かれたバナナのように、遠く離れた国や地域で作られた食べ物に支えられている。毎日の食卓に、新鮮な状態で外国の果物が並び、自分の身体の中に取り込まれるという事実。日々当たり前のように口にする食べ物によって、私たちの身体は、世界の国々とつながっている。一方で、この絵の中のバナナを、直接口に入れて食べることはできない。けれどもそこには、バナナを手にした時の甘い香りや滑らかな皮の手触り、その背景に広がる遠い南国の景色や文化の断片が、色や形に置き換えられ、画面に定着されている。


私たちが秋山さんの作品に向かい、画面を包む空気を体感するとき、自分自身の内なる感覚を起点として、今日もニューヨークで制作を続ける彼女の意識とつながっている。その感覚はいつか、今この時代を生きる様々な地域の人と人とをつなぐ「Home」となることだろう。


岡山県立美術館 学芸員 古川 文子(岡山県新進美術家育成「I氏賞」担当)




岡山県天神山文化プラザ企画展 Tenpla Selection Vol.104 Plus 秋山幸展 一Home一

[会期] 2024年7月17日[水]-7月28日[日] 入場無料

[時間] 9:30-17:00 (最終日は16時まで)

[会場] 天神山文化プラザ 第3展示室


秋山 幸 Akiyama Miyuki

1980 岡山県岡山市生まれ

2004 武蔵野美術大学 造形学部 油絵学科 卒業

2006 武蔵野美術大学 大学院 美術専攻油絵コース 修了

2008 北京中美術大学 実験芸術科 研究生として留学 [〜2010]

2018 ニューヨーク在住 [〜現在]






主な活動

2006 武蔵野美術大学修了制作展優秀賞受賞

2007 第22回 ホルベインスカラシップ奨学者

2008 中国政府奨学金

2009 「通Tong」 (中央美術学院実験芸術科/北京)

2011 第4回 岡山県新進美術家育成I氏賞選考作品展(岡山県天神山文化プラザ/岡山)

    「透明アンブレラ」 (奈義町現代美術館/岡山)

2013 「project N 52/秋山幸展」(東京オペラシティアートギャラリー/東京)

    「すみっこのはしのよそ」(gFAL 武蔵野美術大学/東京)

    「美つくりの里・ 旅するアート」(岡山県津山市衆楽園内/岡山)

    「ダイチュウショー ―最近の抽象―」(府中市美術館市民ギャラリー/東京)

2018 「カウンティングフルーツ」(Little Barrel/東京)

2023 「IDIOLECTS」(ULTERIOR/ニューヨーク)

2024 Tenpla Selection Vol.104 +Plus「秋山幸展 ーHomeー」(岡山県天神山文化プラザ/岡山)




出品一覧

タイトル|素材/技法|サイズ(cm)|制作年

朝食のフルーツ|油絵具・キャンバス|163×130|2017年

Orange squall|油絵具・キャンバス|100×80.3|2017年

Untitled|油絵具・キャンバス|28×20.3|2024年

Fruit Sunset|油絵具・キャンバス|72.7×91|2015年

Till morning|油絵具・キャンバス|71.5×71.5|2024年

Two bears one cave|油絵具・キャンバス・布|167.6×111.7|2024年

Untitled|油絵具・ジュート|28×22.8|2024年

馬と|油絵具・キャンバス|32×41.2|2011年

ABC...|油絵具・キャンバス|85×53|2015年

壺と布 I / Pot and fabric|油絵具・キャンバス|45.5×45.5|2011年

壺と布II / Pot and fabric|油絵具・キャンバス|45.5×45.5|2011年

Dancing routine IV|アクリル・新聞|37×28.1|2023年

Dancing routine I|アクリル・新聞|30.5×28|2023年

Dancing routine II|アクリル・新聞|31.8×25.3|2023年

Dancing routine III|アクリル・新聞|34.6×28.3|2023年

揺れる道/Flicker of the Street|油絵具・アクリル・キャンバス|145.5×89.4|2014年

Arabesque|油絵具・キャンバス|50×65.2|2013年

Yellowish Flowers|油絵具・キャンバス・布|193×111.76|2024年

Dog and Shadow|油絵具・キャンバス・布|76×60.5|2023年

草と人|アクリル・布・紙|40.6×30.3|2024年

Mars|アクリル・紙|40.6×30.3|2024年

BAHAMA$499|アクリル・色鉛筆・新聞・紙|40.6×30.3|2022年

Untitled|アクリル・新聞・紙|40.6×30.3|2022年

Pantry|アクリル・色鉛筆・布・紙|40.6×30.3|2024年

District|アクリル・色鉛筆・紙|40.6×30.3|2022年

Yellowish,two kids|アクリル・紙|40.8×31.8|2023年

//|アクリル・紙|40.6×30.3|2024年

Banana, January|アクリル・色鉛筆・紙|40.6×30.3|2021年

A is seen...|アクリル・紙|40.6×30.3|2021年

Banana shapes and Fabric|アクリル・布・紙|40.6×30.3|2021年

News|アクリル・紙|40.6×30.3|2022年

Brothers|アクリル・布・紙|40.6×30.3|2024年

Untitled|アクリル・布・紙|40.6×30.3|2024年

花と土|アクリル・色鉛筆・布・紙|40.6×30.3|2024年

Banana, Papaya|アクリル・紙|30.3×40.6|2021年

Hit list|アクリル・新聞・紙|40.6×30.3|2024年

Apple and Watermelon|アクリル・麻布・布・紙|30.3×40.6|2021年

花と花模様|アクリル・布・紙|40.6×30.3|2024年

Rainy Day|アクリル・色鉛筆・紙|40.6×30.3|2021年

m|アクリル・紙|30.3×40.6|2023年

How can|アクリル・紙|40.6×30.3|2021年

Pa, Pay, Pay Rent|アクリル・紙|30.3×40.6|2021年

モンキー / Monkey|油絵具・キャンバス|73×53|2010年

Diagonal line|油絵具・キャンバス|91×73|2012年

Light on wallpaper|油絵具・キャンバス|50×60.3|2011年





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本記事は、令和6年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクションVol.104 秋山幸展 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。

発行:岡山県天神山文化プラザ

発行日:2025年3月31日

印刷:株式会社 三浦印刷所

編集:須波 葵枝[岡山県天神山文化プラザ]

デザイン:鳥越 眞生也[鳥越屋]

撮影:加賀 雅俊[べあもん]

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


令和3年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

※各展覧会の個別の小冊子(カラー8ページ/税込200円)

  • 松村 晃泰 展|視線の行方|天プラ・セレクションVol.95

  • 直原 清美 展|時を織り、その向こうに見えるもの|天プラ・セレクションVol.96

  • 寺尾 佳子 展|WATERMARK|天プラ・セレクションVol.97

令和4年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

※各展覧会の個別の小冊子(カラー8ページ/税込200円)

  • 藤飯 千尋 展|UNIVERSE|天プラ・セレクションVol.98

  • 大間 光記 展|集積|天プラ・セレクションVol.99

  • 100回記念 展|過去への返信、未来|天プラ・セレクションVol.100

令和5年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集 ※各展覧会の個別の小冊子(カラー8ページ/税込300円)

  • みやじ けいこ 展|天プラ・セレクションVol.101

  • 潮 嘉子 展 一胡蝶之夢一|天プラ・セレクションVol.103

令和6年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

※各展覧会の個別の小冊子(カラー8ページ/税込300円)

  • 秋山 幸 展 一Home一|天プラ・セレクションVol.104


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。

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