今田 千裕 展 一脈うつ層一|天プラ・セレクションVol.107
- 6 日前
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蝋染め技法によって防染した道筋に沿って流れる岩絵具の粒子、透過性を持つ布の積層など、自身が取り組んだ表現に対し、様々な角度から光を通した見せ方や、静かな揺らぎの効果、そして来場していただいた方々との対話も含め、天神山文化プラザの広い空間での展示によって多くの知見を深めることができました。
本展覧会での貴重な経験を活かし、今後も多様な染色技法、繊維素材、色材による独自表現を発展させ、テキスタイルの可能性の広がりに繋げていきたいです。
今田 千裕




Exhibition Review
今田は倉敷市に生まれ、岡山県立大学大学院を修了し母校で教鞭を執るようになって数年、生粋の岡山っこで、私からすれば娘世代の彼女は、まだ十分に若く愛らしいのだが、見誤ってはいけない。このたびの個展に向け、入念に準備してきたのだろう、以前よりも密度の濃い作品に仕上がっていた。
今田は、主に薄くて軽やかなシルクオーガンジーに蝋染めし、制作する。蝋が置かれた部分には染料が入らないという特性を活かした染色技法は、中国の遺跡から既に2、3世紀頃にはあったとされ、日本では正倉院宝物にも見られ、インドネシアやタイ等のバティックをはじめ、世界各地で汎用される。今田はこの古典的な伝統技法を現在の目で見直し、技法の持つ制約の中で何ができるかを探っている。今田の蝋置きは、布の大部分を埋め尽くし、細くラインとして残した部分に膠を溶いて塗り、岩絵具をパラパラと撒くと膠の中で岩絵具の粒子が動き、独特な表情を見せながら固着する。岩絵具が染み入った細いラインはまるで血管か神経か、何かの回路のようだ。さらにそれを重ね合わせることで、素材感を際立たせ、立体としての“厚み”を持たせている。花弁のように薄く、透かし見ることができるオーガンジーは内に小さな空間を宿し、“厚み”は決して重たくない、否、何か生命の深淵を覗き見たかのような生々しさは、観念的な重さを感じさせもする。記憶や細胞、脈略といったテーマがそう導くのか、テキスタイルという素材と技法の為せる技か、あるいはPC(平面)上でレイヤー(立体)をシュミレーションするというプロセスによるものか、二項対立的な、なんともアンビバレントな感覚が魅力的だ。
新作として新たにシルクスクリーンを併用した。版という文様の反復や染めの明快さをどう作品に取り込んでいくのか、絵画的表現からどのように立体を構築していくのか、技法を見極め、探求する中に独自の表現を見出そうとする今田の、今後の展開が楽しみだ。
岡山県立美術館 副管理者 福冨 幸
岡山県天神山文化プラザ企画展 Tenpla Selection Vol.107 ×Closs 今田千裕展 一脈うつ層一
[会期] 2025年3月25日[火]-3月30日[日]
[時間] 9:30-17:00 (最終日は16時まで)
[会場] 天神山文化プラザ 第3展示室
今田 千裕 Imada Chihiro
1996 岡山県倉敷市生まれ
2021 岡山県立大学大学院 デザイン学研究科 造形デザイン学専攻 修了
現在 岡山県立大学 デザイン学部 工芸工業デザイン学科 助教
主な活動
2019 「Exhibition18-19」(総社吉備路文化館/岡山)
2020 二人展「庭」(ギャラリー倉敷/岡山)
2021 個展「Inside」(Gallery108/岡山)
2022 「倉敷京都国際文化交流展」(倉敷市立美術館/岡山)
「第3回全国大学選抜染色作品展」(染・清流館/京都)
「NIF・YOUNG TEXTILE2022」(東京ビッグサイト/東京)
2023 「現代工芸のダイアローグ」(倉敷物語館/岡山)
個展「かすみをつたう」(Gallery108/岡山)
2024 「第67回倉敷美術展」(倉敷市立美術館/岡山)
2025 Tenpla Selection Vol.107 ×Closs 「今田 千裕 展 一脈うつ層―」(岡山県天神山文化プラザ/岡山)
主な賞歴
2021 第52回毎日・DAS学生デザイン賞 大学生の部“金の卵賞”入選
2022 第3回全国大学選抜染色作品展 最優秀賞
出品一覧
タイトル|素材/技法|サイズ(cm)|制作年
皮膚Ⅰ|絹・岩絵具・蝋染め|20×30×30|2024年
皮膚Ⅱ|絹・岩絵具・蝋染め|20×30×30|2024年
皮膚Ⅲ|絹・岩絵具・蝋染め|20×30×30|2024年
皮膚Ⅳ|絹・岩絵具・蝋染め|20×30×30|2024年
皮膚Ⅴ|絹・岩絵具・蝋染め|20×30×30|2024年
皮膚Ⅵ|絹・岩絵具・蝋染め|20×30×30|2024年
皮膚Ⅶ|絹・岩絵具・蝋染め|20×30×30|2023年
皮膚Ⅷ|絹・岩絵具・蝋染め|20×30×30|2024年
皮膚Ⅸ|絹・岩絵具・蝋染め|20×30×30|2024年
皮膚Ⅹ|絹・岩絵具・蝋染め|20×30×30|2024年
再生|絹・岩絵具・酸性染料・蝋染め|300×90×12点|2024年
Pulsating Repeat|絹・岩絵具・蝋染め・シルクスクリーン|300×75×3点|2025年
脳裏に浮かぶ|絹・岩絵具・蝋染め|160×30×30|2025年
淵泉|絹・岩絵具・蝋染め|20×20×20|2024年
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本記事は、令和6年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクションVol.107 今田千裕展 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。
発行:岡山県天神山文化プラザ
発行日:2025年5月31日
印刷:株式会社 三浦印刷所
編集:須波 葵枝[岡山県天神山文化プラザ]
デザイン:鳥越 眞生也[鳥越屋]
撮影:加賀 雅俊[べあもん]
<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>
令和3年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集
※各展覧会の個別の小冊子(カラー8ページ/税込200円)
松村 晃泰 展|視線の行方|天プラ・セレクションVol.95
直原 清美 展|時を織り、その向こうに見えるもの|天プラ・セレクションVol.96
寺尾 佳子 展|WATERMARK|天プラ・セレクションVol.97
令和4年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集
※各展覧会の個別の小冊子(カラー8ページ/税込200円)
藤飯 千尋 展|UNIVERSE|天プラ・セレクションVol.98
大間 光記 展|集積|天プラ・セレクションVol.99
100回記念 展|過去への返信、未来|天プラ・セレクションVol.100
令和5年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集 ※各展覧会の個別の小冊子(カラー8ページ/税込300円)
みやじ けいこ 展|天プラ・セレクションVol.101
潮 嘉子 展 一胡蝶之夢一|天プラ・セレクションVol.103
令和6年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集
※各展覧会の個別の小冊子(カラー8ページ/税込300円)
秋山 幸 展 一Home一|天プラ・セレクションVol.104
石田 和也 展 一備前磁器の世界一|天プラ・セレクションVol.105
中山 冴子 展 一Calling the Sanctuary一|天プラ・セレクションVol.106
今田 千裕 展 一脈うつ層一|天プラ・セレクションVol.107
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メール tenplaza@o-bunren.jp
受付時間 9:00~18:00
休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)
「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。









