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伊勢崎 寛太郎 展 一そこはかとない一|天プラ・セレクションVol.102

  • 2024年9月8日
  • 読了時間: 7分





最も身近で、当たり前のように存在する土地や大地について、私はどれほど理解しているのだろうか。

地面は何処にでもあり不変的なものであるが、私の中では常に思いがけない発見をもたらす宝箱のような感覚を覚えている。この感覚を持ちながら、漠然とこれから先も自分が立っている足元の土を通して、世界中の人と関わっていくのだろうと思っている。


私は岡山県備前市に生まれ、幼少期から備前焼を身近に育ってきた。備前という土地で、地中深くから掘り起こされた土を介し、多くの人や出来事に触れてきた経験から、人と土地の関わりや「場所」そのものに興味を持った。彫刻という立体的な視点から土地を紐解き、目には見えない出来事や時間に触れ、そこに内在する歴史や存在を立ち上げようとしている。


展覧会「そこはかとない」では、陶芸の手法を応用した《焼成》と《土掘り》という二つのアプローチで「場所」への考察を試みた。

《焼成》の作品では、大理石を焼成し、その場の重力や空気中の水分によって時間とともに風化していくインスタレーションを制作した。石が風化して堆積していくことに土の中で物質が変質する時間のイメージを重ね、焼成という行為によって、焼き物という物質は残っていくが、土という土地・粘土は無くなっていくことを意識していた。これは、伝統工芸である備前焼の土が何年後かには掘り起こすことが出来なくなると言われている、土地利用による環境問題について考える作品でもある。

また《土掘り》の作品では、東京都荒川区で自らの身体で穴を掘り、その空洞の中で塑像を行い、型取りした。東京都荒川区は、1923年に起きた関東大震災による影響で一面全焼している。その廃材や当時の暮らしの一部であろう雑器などが、作品の一部として地中から現れている。

土地に触れ、その場であった出来事を掘り起こし提示することで、鑑賞者に足元の環境について捉え直すきっかけを与えようと試みた。


いま自分のいる場所には、まだ見えていないものが存在している。

何があるのか理解しようとすることや、これからそこに何か残っていくことは、これからの行為によって決まっていくように思う。少しでも意識していくことで、人と土地の関係性がより一体となっていくのではないかと考えている。


伊勢崎 寛太郎










Exhibition Review

そこはかとない未知の世界


伊勢崎寛太郎は、岡山県備前市の備前焼の窯元で育ち、幼少の頃から土との関わりが身近に存在していた。そしてその土から制作された立体表現が他者との間に生みだす未知の世界もまた自然に感じていたことであった。


うごめいている伊勢崎の深層には、粘土から具現化する備前焼の流れがあり、岡山備前に対する意識の関わりが大事なコンセプトのようである。だが、伊勢崎の表現は、ここに来るまでの過程で興味を抱き、触れてみたい、形にしたいと思ったものを完全には掴みきれず、旅人のような流動性も覚える。


作品は、地中に穴を掘り、石膏を流し込み、大地との関わりを形にするために自分の身体や生命の痕跡をも刻み込もうとしている。長い時間に堆積した大理石を焼成して焼石灰を作り、有形無形の時間の経過をインスタレーションで見せ、その変容していく過程にも無限の輪廻を感じさせる。


大地と中空の間で探し物をしている伊勢崎寛太郎は、まさしく自分自身が現代アートのうごめく彫刻体なのだろう。


陶芸家/日本工芸会正会員 隠﨑隆一




岡山県天神山文化プラザ企画展 Tenpla Selection Vol.102 +Plus 伊勢崎 寛太郎 一そこはかとない一

[会期] 2025年8月13日[水]-8月24日[日]

[時間] 9:30-17:00 (最終日は16時まで)

[会場] 天神山文化プラザ 第3展示室


伊勢崎 寛太郎 Isezaki Kantaro

1998 岡山県備前市生まれ

2020 東京造形大学 美術学部彫刻専攻 卒業

2023 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻 修了






主な活動

2021 「植物と容れ物」(Blend studio/大阪)

2022 「LAST STAY」(Hotel koe tokyo /東京)

    「Re-Sculpt」(真鶴観光協会 元干物工場/神奈川)

    「延岡東海さるく2022」(リバーパル五ヶ瀬川/宮崎)

2023 東京藝術大学卒業修了作品展(大学美術館/東京)

    「好きなかたち展」(ギャラリー数奇/愛知)

    「セラミックシナジー展」(京セラ美術館/京都)

    「空気を入れかえる/空気を入れかえる」(東京造形大学/東京)

2024 「KAIKA TOKYO AWARD 2024」(by THE SHARE HOTELS/東京)

    個展「底、透ける煙に」(HIROUMI/東京)

2025 Tenpla Selection Vol.102+Plus「伊勢崎 寛太郎 展ーそこはかとない―」(岡山県天神山文化プラザ/岡山)



主な賞歴

2022 第15回 岡山県新進美術家育成I氏賞 奨励賞

2023 東京藝術大学修了展 帝京大学買い上げ賞

    セラミックシナジー展 秋山裕二賞

2024 KAIKA TOKYO AWARD 2024 入賞




出品一覧

タイトル|素材/技法|サイズ(cm)|制作年

風化している大地|焼成された大理石・空気中の水分・空気の揺れ・時間|サイズ可変|2025年

Locations are also parts of the body I|石膏・焼成された大理石・木・真鍮・身体|180×115×90|2025年

Locations are also parts of the body II|石膏・焼成された大理石・木・真鍮・身体|180×104×90|2025年

地中を覗く|写真・デジタルプリント・干上がった池|146×123×3|2025年

煙のような首|石膏・荒川区南千住の場・遺物|44.5×48×54.5|2025年

身体ト地底 〜南千住〜|石膏・荒川区南千住の場・遺物|96×149.5×70|2025年

煙のような人|石膏・荒川区南千住の場・遺物|221.2×138.5×78.5|2025年

unexplored shovel|ブロンズ|25.5×5.5×9|2024年

My diary 2021|ブロンズ・日記|10.5×1.6×15|2023年

My diary 2019/05/08.09|ブロンズ・日記|21.7×1.4×15|2023年

My diary 2022|鉛・日記|21.8×1.2×15|2023年

My diary 2020/04/12.13|ブロンズ・日記|23×43×14|2023年

drawing|紙・凹み・オイルパステル|61.2×44×2|2024年

zine drawing|紙・身の回りのもの・写真|182×2.5×91|2024年〜2025年





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本記事は、令和7年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクションVol.102 伊勢崎 寛太郎 展 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。

発行:岡山県天神山文化プラザ

発行日:2025年10月31日

印刷:株式会社 三浦印刷所

編集:須波 葵枝[岡山県天神山文化プラザ]

デザイン:鳥越 眞生也[鳥越屋]

撮影:加賀 雅俊[べあもん]

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


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お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

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メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。

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