平井 健三 展|匂い vol.1 Wシリーズ|天プラ・セレクションVol.30



「匂い」シリーズに取り組んで十年余りになる。発端はジャスパー・ジョーンズの「Scent」 1973-74がヒントになっている。オレンジ、緑、紫のハッチングが画面全体を覆う作品である。またジャクソン・ポロックにも 1955年に同名の作品がある。1978年西武美術館における回顧展カタログに掲載された東野芳明のジャスパー・ジョーンズ論の末尾に引用されているサミュエル・ベケットの次の言葉は印象的であり示唆に富んでいる。

「何も表現するものがないという表現、たよれるものが何もないという表現、出発点が何もないという表現、表現する力も表現したいという欲望もないという表現、しかも、絶対に表現しなければならないという強制だけはあるという表現」


再現的表現を断念することから始まった私の表現は二十歳過ぎの学生時代から続いているものである。いつの日か自分なりのリアリテイを感じる空間表現を見つけていきたいと念じながら制作している。今回の発表で自分なりにまとめることができ、次の方向が見えてきたようで自分でも楽しみにしている。

年を経るに従って、生地の自然に囲まれて生きていることの幸せを感じている。マイペースではあるがまわりの環境、生活を楽しみながらゆっくりと歩みたい。

平井健三



津山市在住の画家・平井健三にとっては 12年振りになる本格的個展。しかも意外ではあるが、県南では初個展でもあった。本展は、地階・第2展示室の広い空間全体を覆ったワンマンショーの趣のある堂々たるもの。過去の個展の中で最も広いスペースでの作品展示となった。かねてから、あの広い空間には骨太な平井作品が最も相応しい、と思っていただけに感無量である。2000年以降に制作している “W” シリーズを、統一的に大作 11点で見せた内容は見応え充分。この作品のために空間があるくらいに、相性良くピッタリと調和した気持ちの良い空間であった。ライティングも効果的で、作品は浮遊しているように美しく、冴えていた。絵画の醍醐味を存分に味わえ、平井の存在感を如何なく発揮させた展覧会でもあった。1990年代までの作品は、三角形や六角形にモノトーンを基調とした渋い幾何学的な大作、連作が“平井カラー”として集約されていた感があった。しかし、2000年以降、啓示を受けたかのように赤や青、黄、紫等数種類の色を使ったレゴを組み合わせたような鮮やかでポップな「W」シリーズが“参入”。以来、平井の表現の幅はより広がりを見せている。「青の時代」からの脱却をよろこぶものだ。


岸本和明

(奈義町現代美術館 副館長/天プラ・セレクション推薦委員)

岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.30 平井健三展 匂い vol.1 Wシリーズ

[会期]2010年7月27日〜8月1日

[会場]岡山県天神山文化プラザ 第2展示室


平井 健三

1949 岡山県津山市に生まれる

1973 愛知県立芸術大学 卒業

1975 同大学大学院修了

1980 制作のため来日したアルマン氏のアシスタントを2ヶ月つとめる


個展

1977 バルール画廊/名古屋

1979 京町ギャラリー/岡山県津山市

1981 アキライケダギャラリー/名古屋

1989 アキライケダギャラリー/名古屋

1991 アパッショナート/岡山県津山市

1997 奈義町現代美術館/岡山

1998 津山市立図書館 美術展示ホール/岡山県津山市

1998 勝北町文化センター/岡山県勝田郡勝北町

2010 天プラ・セレクション vol.30 平井健三展―匂い vol.1 W シリーズ(岡山県天神山文化プラザ/岡山)


グループ展

1973〜1976 E.W.L.L 版画展(ギャラリーデコール/東京)

1975〜1982 YAMATABIRA 展(ギャラリーデコール/東京)

1977 ワールドプリントコンベ77(サンフランシスコ近代美術館/アメリカ)

1978 二人展(アキライケダギャラリー/名古屋)

1983 7人展(岡山県津山市)以後毎年

1984・1986・1989 伍の空間展(大阪府立現代美術センター/大阪)

1989 ギャルドファイブ展参加(岡山県総合文化センター/岡山)以後毎年

1989 7人展(倉敷市立美術館)

1989 A・G・k展参加/名古屋

1991 第12回汎瀬戸内現代美術展(岡山県総合文化センター/岡山)

1991 NAGOYA-KOBE 展(画廊ポルティコ/神戸)

1992 第13回インパクトアートフェスティバル 92(京都市立美術館/京都)

1994 岡山県現代洋画選抜展(岡山県総合文化センター/岡山)

2003 アートウェーブ岡山コラボレーションポエム 2003 (岡山県総合文化センター/岡山)


出品一覧

タイトル|素材/技法/形状|サイズ(cm/縦×横×奥行き)|制作年

匂い|綿布にアクリル|276.0×654.0|2002

匂い - W - 遠近法|綿布にアクリル、木、鏡|298.5×580.5×104.0|2003

匂い - 土|綿布に油彩|298.5×772.5|2004

匂い|パネルに麻布・油彩|190.5×381.0|2004

匂い - 空・海|4パネルに麻布・油彩|274.5×183.0|2006

匂い|綿布にアクリル|291.0×582.0

匂い|綿布に油彩、アクリル|274.5×549.0

匂い|パネルに麻布・油彩|193.5×397.0

匂い|綿布にアクリル|300.0×548.0

匂い|パネルに綿布、アクリル・屏風|187.5×302.5×66.0

匂い - 早春 - 1|綿布にアクリル、柿渋 他|291.0×679.0|2010

 

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本記事は、平成22年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。


編集・発行:岡山県天神山文化プラザ

撮影:青地大輔[ブルーワークスPHOTO&DESIGN Office]

発行日:平成23年3月31日

デザイン:ブルーワークスPHOTO&DESIGN Office

印刷:株式会社 みつ印刷

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成22年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2010年7月6日〜2011年4月3日の期間に開催された8人の個展の記録集として発行したものです。


<目次>

  • 青地 大輔 写真展|犬島時間|天プラ・セレクションVol.29

  • 平井 健三 展|匂い vol.1Wシリーズ|天プラ・セレクションVol.30

  • 柴田 れいこ 展|Sakura さくら|天プラ・セレクションVol.31

  • 加藤 直樹 陶展|ナオキショウDX|天プラ・セレクションVol.32

  • 甲田 千晴 展|廻生する森|天プラ・セレクションVol.33

  • 大月 理恵 展|dream garden|天プラ・セレクションVol.34

  • 池田 理寛 写真展|Afterimage|天プラ・セレクションVol.35

  • 生誕100年記念 大館桂堂 遺墨展|天プラ・セレクションVol.36


カラー30ページ

税込1,000円


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。