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松村 晃泰 展|視線の行方|天プラ・セレクションVol.95

更新日:4月17日



天気が悪くなってくると祖母は

「景色悪なってきたな〜」と言っていた。

いつの間にかその言葉が染み込んだ。

仕事をして家事をして。

時々…石を彫りガラスを磨く。

日々の積み重ねが染み込み糧となる。

思い描いた毎日とは少し違うが、

思いがけない景色に出会う楽しさがある。

雨の日も風の日も「いい景色になってきた」

そう思えるような日々を送りたいと思う。

松村 晃泰



Exhibition Review

すでに石彫作家として活躍する松村晃泰さんの『視線の行方』と題した岡山での初個展は、彼の現在を力強く伝える。

入り口からの正面にはライトの光が屈折して反射している新作群。石にガラス板を貼り合わせた不自然で自然な形態には、静かな驚きと安心が宿る。中央に進むと、矢掛町産の白色花崗岩を使用した小さな椅子が21個。重い石なのに、なんと動く椅子である。さらに奥のパーテーションの裏に進むと、照射装置に照らされ自転する作品のガラス部を通過し屈折しオーロラのように周囲の壁に漂う光が映し出される。照明装置も自転装置もこだわりの自作である。石とガラスの融合作品を17点、動く石の椅子を21点、そして、光を使った石とガラスの融合作品2点の演出と構成は、期待を超えた空間を体験させてくれた。

私が思う松村さんは、湧き出るイメージを唯一のカタチに昇華し、自分でつくりあげる探求者。美しい風景を見るために手を動かしながら、新しい視点を探り続ける厳しい挑戦者だ。 「実は、制作過程では完成はどうなるか私もわからない。でも、知らないからこそ楽しみがあり、やめられない。」と言う。カタチ自体の美しさを追求する作家もいるが、彼は、その実在への感動を越えた、例えば固定概念を一瞬で覆す驚きや印象、ことばにできない意味不明な心地よい気持ちを持つ作品をつくりたいらしい。こだわりを固定せず優柔不断に追求を続けるからこそ、未知なる方向が現れる。彼しか表現できない作品が生まれる。

次の新しい表現のプロローグとも感じる本展、絶えず変化と深みを残す彼の制作展開は、次作展を待たなくてはいけない。楽しみだ!


彫刻家/一社団法人岡山県美術家協会 事務局長 小林 照尚


岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.95 松村晃泰展 視線の行方

[会期]2021年11月16日〜21日 [入場無料]

[時間]9時30分〜17時(最終日は16時まで)

[会場]岡山県天神山文化プラザ・第3展示室


松村 晃泰 Teruyasu Matsumura

1974 京都市生まれ

1999 大阪芸術大学大学院 芸術制作研究科(彫刻)修了

現在 岡山市在住


主な活動

1997 未来に生きるMOAI計画(岡山犬島)

2001 国際石彫シンポジウム ゴア 2001(インド)

2005 8人の作家(アートコートギャラリー/大阪)

2007 第一回 国際彫刻シンポジウムロルダン第1位(アルゼンチン)

2008 国際雪像彫刻大会ジャパンカップ名寄 第1位(北海道 名寄市)

2010 松村晃泰展 ―うつろい―(ギャラリーはねうさぎ/京都)

2011 国際雪像彫刻チャレンジ(カナダ ホワイトホース)

2014 第18回ハルピン国際雪像彫刻大会 第3位(中華人民共和国)

2014 Carve Tahoe アーチストチョイス賞(アメリカ合衆国)

2016 ザ・のみぎリズム 2016 [主催・参加](岡山 矢掛町)

2017 岡山現代彫刻の断片(奈義町現代美術館ギャラリー/岡山)

2017 笠岡諸島アートブリッジ2017(岡山 白石島)

2018 World Snow Festival 第2位(スイス グリンデルワルト)

2019 国際雪像彫刻チャンピオンシップ2019 アメリカ合衆国 ブリッケンリッジ)

2020 石 〜3人のかたち〜(岡アートギャラリー/岡山)

2021 天プラ・セレクションvol.95 松村 晃泰 展「視線の行方」(岡山県天神山文化プラザ)


出品一覧

タイトル|素材/技法|サイズ(cm)|制作年 Phantom -Mt.Pink-|万成石、積層ガラス|25×25×24|2021

Phantom -Mt.Blue-|備中青みかげ、積層ガラス|25×25×23|2021

Phantom -Mt.White-|白桜みかげ、積層ガラス|25×25×23|2021

Phantom -pink pillow-|万成石、積層ガラス|36×19×16|2021

Phantom -blue pillow-|備中青みかげ、積層ガラス|32×20×14|2021

Phantom -white pillow-|白桜みかげ、積層ガラス|30×17×14|2021

Phantom -pink pool-|万成石、積層ガラス|45×30×17(サイズ可変)|2021

Phantom -blue pool-|備中青みかげ、積層ガラス|43×30×22(サイズ可変)|2021

Phantom -pudding-|能勢石、積層ガラス|33×14×25|2021

Phantom -cube-|白桜みかげ、積層ガラス|各10×10×10・3点|2021

Phantom -curtain-|黒大理石、積層ガラス|38×19×31|2021

Phantom -frame-|白桜みかげ、積層ガラス|37×15×34|2021

Phantom -spring-|黒大理石、積層ガラス|14×14×43|2020

Phantom -inspiration-|黒大理石、積層ガラス|34×16×42|2021

Phantom -bubble-|能勢石、積層ガラス|29×11×9|2021

Phantom -wave-|能勢石、積層ガラス|25×11×9|2021

Phantom -glory-|黒大理石、積層ガラス|30×30×38(サイズ可変)|2020

Phantom -cacao-|能勢石、積層ガラス/インスタレーション|30×25×11|2020

Phantom -moon-|能勢石、積層ガラス/インスタレーション|28×22×10|2020

観自在石|白桜みかげ、キャスター/インスタレーション|各30×30×40・21点|2021

 

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事務局経由で受け付ける




 

本記事は、令和3年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクションVol.95 松村晃泰展 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。

発行:岡山県天神山文化プラザ

発行日:2022年2月28日

印刷:株式会社 三浦印刷所

編集:名合貴洋[岡山県天神山文化プラザ]

デザイン:鳥越眞生也[鳥越屋]

撮影:加賀雅俊[べあもん]

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


令和3年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

※各展覧会の個別の小冊子(カラー8ページ/税込200円)

  • 松村 晃泰 展|視線の行方|天プラ・セレクションVol.95

  • 直原 清美 展|時を織り、その向こうに見えるもの|天プラ・セレクションVol.96

  • 寺尾 佳子 展|WATERMARK|天プラ・セレクションVol.97


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。

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