髙原洋一 展|反復:生成|天プラ・セレクションVol.77

更新日:7月8日




反復はレピート、繰り返しである。服地のプリント模様や壁紙には図柄の継ぎ目が見えないよう巧妙にレピートされている。「KIBI KOMON」(吉備小紋)と名づけられた作品は小さな点描の繰返しを用いて大きな画面に仕上げている。異なる版を組み合わせることによって視覚的なイリュージョンが生じ、新たな作品が創作される。「大気マンダラ」は9種類のグラデーションでそれぞれ9枚の部数を刷り、そこから色の異なる9枚セットを9つに仕分ける。それに図像の異なる9種類の版で順番に刷っていくと81枚の異なる作品が生まれる。このようにして小さな円形の作品が作られた。大きな円形の作品も同様な手順で制作している。


色彩のグラデーションは「Atmosphere:Window」(気圏:窓)も「大気マンダラ」も夜明けや夕焼け、砂漠や大地、海や森など有機的な自然の色をイメージしている。第4展示室の作品は並び替えが可能な可変的作品として展示空間に合わせ自由に構成することができる。また第3展示室の作品はそれぞれペアーになっているものが多く、色彩の変化によって画面の印象が大きく変わる面白さが版の魅力でもある。


髙原 洋一



Exhibition Review

大気が揺らぎ、光と影の交錯が一瞬一瞬異なる相貌を見せるこの世界。例えば地面に棒を立ててみると面白い影が生まれる。そんな小さな行為からできた、イメージ喚起力に富む景色をモノクロの写真に収め、シルクスクリーンの版画を作る。バックの色を変えて刷ると、どんどん違う世界が広がっていく。

大雑把に言うとこれが版画家髙原洋一の表現方法。古来、万物を構成すると考えられた四大元素=土、水、火、風(大気)=をテーマに制作する。2008年に岡山県内の公立美術館3館を使った大規模個展では、土、水、火の表現を追求したが、天プラ・セレクション「反復:生成」は、「大気」シリーズを中心にした252点で構成した。

緑や赤、黄色...鮮やかな色彩に多様に彩られた円形の画面には、雲とも大地のしわとも見える図柄が浮かぶ。まるで宇宙に浮かぶ輝く地球の姿のようだ。種を明かせば、鉄板に水を張って生みだした「さび」が作る景色だが、深淵で神秘性を帯びる。その虚と実が入り交じる妙味が「髙原マジック」である。


「版画は単なる複製ではない。私は複数性のオリジナルを作る」と髙原が語る通り、同じ図柄で色彩を異にした9作品をそれぞれ四角い台紙に収めて曼荼羅のように並べたり、円形ばかり126点を壁一面に配したり、ダイナミックな展示からは、宇宙船の中から宇宙を見ているような、あるいは、宇宙空間に浮遊しているような感覚に陥る。

同時に、妙に身近な「手触り感」もある。景色や色彩から夕焼けや幼い日の思い出など懐かしい感情も呼び起こされるのだ。「日常の風景の中で一瞬、永遠が見えたと思うときがあるはず。そういう瞬間をとらえた」という髙原。意外にも天プラでの個展は初だが、岡山県総合文化センター時代の汎瀬戸内現代美術展に出品し、近年は運営にも携わった勝手知ったる天プラの展示空間を、時間と空間を旅する冒険の場に変えた。


天プラ・セレクション推薦委員/山陽新聞社編集局 局次長 江見 肇


岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.77 髙原洋一 展 反復:生成

[会期]2017年4月25日〜30日 [入場無料]

[時間]10時〜18時(最終日は16時まで)

[会場]岡山県天神山文化プラザ・第3・4展示室


髙原 洋一 Yoichi Takahara

1944 岡山市に生まれる

1968 武蔵野美術大学 造形学部産業デザイン学科商業デザイン専攻 卒業

1971 鐘淵紡績株式会社意匠研究所退社、作家活動に入る


現在 岡山市在住


主な個展

1980 シロタ画廊 (東京)[以後 ’89、’94]

1981 アートスペース貘(福岡)[以後 ’82、’89、’90、’92、’97、’17]

1991 ヒロチカシゲギャラリー(岡山市)[以後 ’93、’96、’00]

1996 あかね画廊(東京)[以後 ’02]

1999 サロン・ド・ヴァンホ一(倉敷市)[以後 ’06]

2001 ギャラリーマーヤ(高槻)[以後 ’02、’04、’06]

2002 アートガーデン(岡山市)[以後 ’05、’09、’11]

2003 色彩美術館(東京)[以後 ’05、’10、’16]

2008 奈義町現代美術館ギャラリー、岡山市デジタルミュージアム、倉敷市立美術館(岡山県)

2012 ギャラリーやぶき(岡山市)

2015 アンクル岩根のギャラリー(岡山市)

2017 天プラ・セレクション vol.77「髙原洋一展 反復:生成」(岡山県天神山文化プラザ)


主な賞歴

1983 岡山県文化奨励賞

2006 福武文化賞

2009 山陽新聞賞(文化功労)、岡山県文化賞、マルセン文化大賞


出品一覧

技法:シルクスクリーン(全作品共通)

タイトル|素材|点数・サイズ(cm)|制作年 Atmosphere : Window|横野和紙|2点・各49.4×49.4|2017


Atmosphere : Window

 ABⅠ・ABSⅠ|アルシュ|2点・各190×104|2010

 CSⅠ〜CSⅨ|横野和紙|9点組・各49.4×49.4|2017

 CSⅪ〜CSⅩⅩ|横野和紙|10点組・各49.4×49.4|2017

 DⅠ〜DⅥ|アルシュ|6点組・各124×100|2011

 DSⅠ〜DSⅥ|アルシュ|6点組・各124×100|2011

 EBR・EBL|アルシュ|2点組・各100×88|2010

 FⅠ・FⅡ|アルシュ|2点・各75.5×206|2011

 GAⅠ・GBⅠ・GCⅠ・GDⅠ|アルシュ|4点・各66×50|2011

 GAⅡ・GBⅡ・GCⅡ・GDⅡ|アルシュ|4点・各66×50|2011

 GLB・GLA|アルシュ|2点・各153×108|2011


Atmosphere : MANDARA|アルシュ|45点 各φ49.4|2013

大気マンダラ|アルシュ|81点 各φ36.8|2013

Atmosphere: MANDARA F・G・H・I・J|アルシュ|5点 各9点組・各49.4×49.4|2017


地平線 Ⅰ・Ⅱ|アルシュ|2点・各56×40|2016

KIBI KOMON|横野和紙、黒谷和紙|7点・各91×55.5|2016

Dot and Dot|アルシュ|4点・各118.5×200|2015

Dot and Line 2015|アクリル|9点・各6×φ16.4|2015

Dot and Line 2016|アクリル、ステンレス|12点・各20.8×φ16.4|2016


 

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本記事は、平成29年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクションVol.77 髙原洋一展 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。


発行:岡山県天神山文化プラザ

発行日:平成29年5月31日

印刷:株式会社 三浦印刷所

編集:福田淳子[岡山県天神山文化プラザ]

デザイン:鳥越眞生也[鳥越屋]

撮影:加賀雅俊[べあもん]

照明:池田正則[岡山県天神山文化プラザ]

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成29年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2017年4月25日〜2018年4月1日の期間に開催された6人の各展覧会の個別の小冊子を合本し、1年間の記録集として発行したものです。


<目次>

  • 髙原洋一 展|反復:生成|天プラ・セレクションVol.77

  • 杉山恭平展|空想の世界|天プラ・セレクションVol.78

  • 金孝妍展|線ヲ思フ|天プラ・セレクションVol.79

  • 田丸稔展|叙事詩の男、こがねいろの月|天プラ・セレクションVol.80

  • 中本研之 陶展|派生|天プラ・セレクションVol.81

  • 千 足 展|オノマトペ|天プラ・セレクションVol.82


カラー52ページ

税込1,000円


※各展覧会の個別の小冊子も発行しています(カラー8ページ/税込200円)


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。