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山本哲也展|袖は襟で襟はなくないものはある|天プラ・セレクションVol.70

更新日:4月17日




僕の好きなファッションは、不思議なものでうまく言葉にできない。

服を作るときには着る人のことや着たときのことを考える。

あるいは、ときどき全く考えない。

どんなものでも着てみることで気持ちに変化が訪れる。


それは今まで知っていた気持ちや全く知らない何か。

知らないことはうまく言葉にできない。

その知らないことを知りたいと思うし、体験してみたい。

僕の好きなファッションは、そんな言葉にできない出来事だと思う。


山本哲也



ノイズの交錯する会場は、大きなウォークインクローゼットのようであり、ラボのようでもあった。コート、ドレス、ニット、帽子、靴にバッグ。素材も形も異なる色とりどりのアイテムで構成されたそこは、怪しげに華やいでいて何事かが始まりそうな心躍る空間となっていた。


なぞかけのようなタイトル「袖は禁で襟はなくないものはある」にオーディエンスはどのように反応したのだろうか。ヒントは制作に際して語った山本の言葉にある。


「人が服を着る事で生まれる雰囲気とか、服が人に及ぼす精神的な影響に興味がある。それらは目に見えないけど新しい意味での服の機能性かもしれない。」と。ただここで「新しい意味での」とある服の機能性とは、実は本質的な服と人との関係性であって、それが改めて認識されている言葉ととれないだろうか。


たぶんほとんどの人は生まれてすぐ布をまとう。ふんわりといつくしむようにやさしくくるまれるだろう。そうして差異はあれども人がその生を終えるまでの時間、長く親しく共にある衣。それはもはや人の心と体の一部と言えるほどの近さだ。


今展は、あまりに日常すぎて意識することの無かった、こうした服と人との深遠な関わりに思いを巡らせる機会となった。会場のブースは、軽やかに各アイテムの魅力を伝えていたが、その根底には既成の縛りに対して疑問を呈する山本の姿を感じ一遍の詩が思い出された。


でき上がったどんな権威にも縛られず

流れ動く多数の意見にまどわされず

とらわれぬ子どもの魂で

いまあるものを組み直しつくりかえる


谷川俊太郎『魂のいちばんおいしいところ』

「成人の日に」より抜粋


天プラ・セレクション推薦委員

高梁市成羽美術館学芸員

渡辺 浩美


岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.70 山本哲也展 袖は襟で襟はなくないものはある

[会期]2016年1月6日(水)〜10日(日)

[会場]岡山県天神山文化プラザ 第3・4展示室


コラボレーション・パフォーマンス

山本哲也(POTTO)、明石めぐみ(Laft)、 荒木昭義(YESTERDAYBOY) 2016年1月9日(土)

山本の展示空間を受けて、明石のコンテンポラリーダンス、荒木の電子音楽が即興的にパフォーマンスされた。直前まで公開制作を続けた「音にならない音 服にならない服」を明石が1枚ずつ重ね着してゆく中で、ファッション・身体・音が新鮮な融合を見せた。


山本 哲也

1974 兵庫県生まれ

1997 文化服装学院デザイン専攻 卒業

2001 POTTOの活動を開始、以降ファッションショーで作品を発表

2007 POTTO SHOP(恵比寿)オープン

2011 東京から岡山に移住

現在 岡山市在住


主なファッションショー、展覧会など

2004 what is your name? (青山スタジオ/青山)

2005 JFW「conversation」(聖徳記念絵画館前特設テント)

2006 JFW「ONE TASTE」 (QUEST HALL)

2008 Everyday Life 1~4 絵になる服 (POTTO SHOP/恵比寿)

2011 ワイルドスタイルとか恐山(Vacant/原宿)

2011 舞台「トータルリビング1986-2011」衣装デザイン

2012 「FUTURE BEAUTY 日本ファッションの未来性」(東京都現代美術館)出品

2013 現代源平屋島合戦絵巻(香川) 衣装ディレクション

2013 UF男とネス子たち(渋谷パルコ2.5D/代々木公園)

2013 瀬戸内国際芸術祭2013にて滞在制作・ファッションショー「山POTTO SHOP takamatsu」(香川・高松港)

2016 天プラ・セレクションVol.70「山本哲也展 袖は襟で襟はなくないものはある」(岡山県天神山文化プラザ)

2016 瀬戸内国際芸術祭2016参加「哲子の部屋」を発表(岡山・宇野港)


山本 哲也(POTTO)WEBサイト

出品一覧

タイトル|素材/技法|制作年 音にならない音 服にならない服|カセットデッキ、衣服、合板|2016

1枚の型紙の服:コート/スカート/シャツ/ワンピース|ウール、綿、キュプラ|2006・2016

絵になる服 ニビル:魚/dance/A.K/SPY/シャチ/窓/サル|綿、ウール、レース、ボタン、フエルト、ペンキ|2008・2016

木目絵画:3人、4人、1人、2人の女性/3人のフクロウ|ラッカースプレー、合板|2016

instagram|スニーカー、ゴム手袋|2016

GORE-TEX ブルーシートドレス|ブルーシート、木材|2015

ぬいぐるみの型紙の服 7点|シルク、綿|2004〜2015

Shoes 5点|スニーカー、ハイヒールパンプス|2001〜2015

Make up|アクリル、ラッカースプレー、キャンバス|2015

クマ&クマ|ぬいぐるみ、ウール|2015

Birdhouse snake|木材、ぬいぐるみ|2015

Uma|ポリエステル|2015

顔だけ|ぬいぐるみ、ラッカースプレー|2015

ポ・リーグ|アクリル、フエルト、キャンパス|2015

コルセット(クマ)|スニーカー、ぬいぐるみ、ウール|2015

人間|ニット|2015

洗濯バサミのシャンデリアと廃材のイス|洗濯バサミ、ライト、木材、ペンキ|2007・2015

pug flag 4点|シルク|2011

B.B|綿|2008

yahoo! auction 井上さん|found object|2008

コラージュ|mixed media、コラージュ|2007

speaker|スニーカー・スピーカーコーン、チュール|2007

顔の服:face ウサギ|ボンディング|2006

地上絵の服:fish/hand/flower|綿、麻|2005

名前の服:my name is peanuts|ウール、キュプラ|2004

teddy bear dress|シルク、綿|2003

ショーDVD 5点|映像|2003〜2013


 

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本記事は、平成27年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクションVol.70 山本哲也展 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。


発行:岡山県天神山文化プラザ

発行日:平成28年3月31日

印刷:株式会社 三浦印刷所

編集:福田淳子[岡山県天神山文化プラザ]

デザイン:鳥越眞生也[鳥越屋]

撮影:加賀雅俊[べあもん]

照明:池田正則[岡山県天神山文化プラザ]

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成27年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2015年8月4日〜2016年2月7日の期間に開催された6人の各展覧会の個別の小冊子を合本し、1年間の記録集として発行したものです。


<目次>

  • カスパー・シュワーベ展|ars geometrica|天プラ・セレクションVol.66

  • 丸山智代展|私の秘密の住人たち|天プラ・セレクションVol.67

  • 吉行鮎子展|エモーションが止まらない|天プラ・セレクションVol.68

  • 細見博子展|蝿女|天プラ・セレクションVol.69

  • 山本哲也展|袖は襟で襟はなくないものはある|天プラ・セレクションVol.70

  • 島田悠美子展|増殖する記憶 ―目に見えない生命のかたち―|天プラ・セレクションVol.71


カラー52ページ

税込1,000円


※各展覧会の個別の小冊子も発行しています(カラー8ページ/税込200円)


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。

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