加藤晋平 写真展|家族のカタチ2|天プラ・セレクションVol.60

更新日:7月7日



2011年、僕は震災・原発事故をきっかけに家族4人で岡山へ移住した。その後、同じように多くの人が岡山に移ってきたことを知る。

彼らの中には、そのまま定住する人もいれば、また別の土地へ移って行く人もいた。以前住んでいた場所に戻った人も少なくない。僕は、そんな“移ろい”の中にある人たちの今の姿、思いを記録に残しておきたいと思った。


避難者支援ネットワークや、知り合いを介して撮影協力者を募った。

何度かメールのやり取りをした後、家を訪ねた。はじめに1〜2時間、 避難・移住に至った経緯や、これまでどんな暮らしをしてきたのかを互いに話しあった。当事者同士が抱く共感のようなものがあり、距離が縮まっていくのを感じた。

撮影は、今の生活が窺える場所を選び、それ以外はなるべく作為的にならないよう心がけた。彼らが今まで生きてきた時間とこれから生きていく時間に思いを巡らせ、シャッターを切った。流れていく家族の時間の1ページに枝折をはさむような気持ちだった。

震災・原発事故から4年が経ち、当時の記憶が少しずつ薄れていることに気づく。忘却は必然のことかもしれない。でも、このまま忘れ去ってはいけないという思いもある。今あらたて、写真に写る人たちの眼差しに自分の思いを重ねている。


加藤 晋平



加藤は震災により岡山に移住してから、同じ様な体験をしている家族の姿を撮り続けている。作品には、それぞれの家族の姿があり、そして、静かにこちらを向く眼差しがある。写真の横に添えられた小さな本には、それぞれのエピソードが書かれている。が、そこにメッセージの要素はない。淡々と経緯が示されているだけで、感傷的な印象もない。全ては写真に写っている家族の眼差しに集約させてあるのだ。類型学的なアプローチにも見えるその写真を、どの様なスタンスで鑑賞するべきか、戸惑いを持つ人もいるだろう。鑑賞すると同時に、彼らの眼差しにこちらが晒されるからだ。

震災を契機に変化していく家族のカタチ。写っている人たちはある意味特別な人であるが、ある意味そうではない。「これは誰しもの問題なのだ。」加藤はそのことを「眼差しの仕掛け」を使って投げ掛けている。被写体となった家族の眼差しを通して、いま本当に大事にするべきことは何なのか、と考えることを促している。

この「家族のカタチ」の撮影を通して加藤がいま提起しているのは、きっと「絆」等に代表されるドラマチックな感情の共有ではない。熱っぽさの後ろで見過ごされがちな、自分のこととして引き寄せる冷静な想像力を、作家自身も、逡巡を重ねながらも希求しているはずだ。

写真家としての加藤の眼差しを、今後も注視していかなければならない。

画家 島村 敏明

岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.60 加藤晋平 写真展 家族のカタチ2

[会期]2014年5月6日(火)〜11日(日)

[会場]岡山県天神山文化プラザ 第4展示室


加藤 晋平

1976 ニューヨーク州生まれ

2000 駒澤大学卒業 2002 日本写真芸術専門学校中退

2009 無印良品撮影室を経て独立

2011 原発事故をきっかけに東京都から岡山市へ移住

2012 震災・原発事故による避難・移住者家族の撮影を始める


現在 岡山市在住


展覧会

2009 グループ展(プロモアルテ/東京青山)

2011 グループ展(INSTACE/東京新宿)

2013 家族のカタチ(岡南教会/岡山市)

2014 家族のカタチ(スローギャラリー/東京国分寺)

2014 天プラ・セレクションVol.60 「加藤晋平写真展 家族のカタチ2」(岡山県天神山文化プラザ)


加藤 晋平 WEBサイト

https://katoshinpei.net/


出品一覧

タイトル|素材/技法/形状|サイズ(cm)|制作年 家族のカタチ2

|写真(フィルム/インクジェットプリント)、文庫本ノート|40.6×50.8・23点|2013-2014

|写真(フィルム/インクジェットプリント) |30.5×40.6・10点|2013-2014

 

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本記事は、平成26年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクションVol.60 加藤晋平展 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。


発行:岡山県天神山文化プラザ

発行日:平成27年3月31日

印刷:株式会社 三浦印刷所

編集:福田淳子[岡山県天神山文化プラザ]

デザイン:鳥越眞生也[鳥越屋]

撮影:加賀雅俊[べあもん]

照明:池田正則[岡山県天神山文化プラザ]

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成26年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2014年4月15日〜2015年3月29日の期間に開催された7人の各展覧会の個別の小冊子を合本し、1年間の記録集として発行したものです。


<目次>

  • 藤原裕策展|ゴルゴダ ―展翅のささやき―|天プラ・セレクションVol.59

  • 加藤晋平 写真展|家族のカタチ2|天プラ・セレクションVol.60

  • 胡桃澤千晶展|かげろうエレジー|天プラ・セレクションVol.61

  • 真部剛一展|虚実皮膜|天プラ・セレクションVol.62

  • 宮崎政史展|天プラ・セレクションVol.63

  • 片山康之展|完成形の可塑性能|天プラ・セレクションVol.64

  • 三宅良史展|日本画×インスタレーション|天プラ・セレクションVol.65


カラー60ページ

税込1,000円


※各展覧会の個別の小冊子も発行しています(カラー8ページ/税込200円)


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。