本日々の営みとしての作品たちを、
みなさまに見ていただく機会をもちました。
ただ散らばっている断片が、たまたまに一瞬かさなりあう。
それらのあいだにも、浮かんだり沈んだりしながら。
すぐにひとまとめにすると、わかったような気がするけれど、
溶けあうまで、そのまま待ってみる。
作品たちを会場に持ち込んだあとは、それらにゆだねました。
積みかさねを手ばなすやいなや、それらがうごく。
わたしはただ、その機をのがさないように、すっと措く。
さもないと、たちまちに消えていくので。
あるとき、わたしの並べた植木鉢がうごいていたとしても、
それはわたしがしたのか、あなたがそうしたのか、わからない。
自然なものも、作為のものも、無意識のものも、
おさまるべきところにおさまっている、庭のような作品。
そのようにありたいと願っています。
春がめぐり、その続きをまた問いはじめようと思います。
榎真弓
時の庭
展示作品の「かさなり」を意識すると、展示会場のさまざまなものが整然とかさなり、場を作っていることに気づく。四角い窓枠、中二階の前川建築によるデザインの壁、白いパンチングボード、そしてレールにかかったまま残された展示用フック。それは6日間という時間を互いに過ごすことを心地よく迎えている。高窓の外からの光さえもまた、青いグラデーションの調子となってそよいでいる。時間の移ろいがかさなる。
作品のひとつずつを見る以上に、連なる作品と作品、作品と見る側のそのかさなりを感じる。会場を歩くその足音も、空調の風も、そのかさなりとしてひとつひとつの時をかさねていく。ある断片がゆるやかにフェイド・インしてはフェイド・アウトし、またほかの断片とフェイド・インする。
私はその小さな空間から深遠な流れの中で十分に空を見、光を飲み込み、自然と呼吸する。そのもろもろの生を意識している。個々の作品は作品として場を変えることで、また別の人にその気配を伝えることとなるだろう。二つ、三つ、四つ、五つ、かさなりを編集する。それらのあいだが人の希望となり、光となる。
美術家/京都造形芸術大学教授/天プラ・セレクション推薦委員 東島毅
岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.57 榎真弓展 それらのあいだにも。
[会期]2014年2月11日(火)〜2月16日(日)
[会場]岡山県天神山文化プラザ 第4展示室
榎 真弓
1960 広島県広島市生まれ
1983 岡山大学教育学部卒業
1990 Royal College of Art. Faculty of Fine Art, Printmaking Course修了
現在 岡山市在住
主な活動
1986 第6回現代版画コンクール展(大阪府立現代美術センター/大阪)
1987 第3回西武美術館版画大賞展(西武アートフォーラム/東京)
1995 第14回汎瀬戸内現代美術展 (岡山県立総合文化センター/岡山)
1998 フィリップモリスアートアワード 1998. ファイナルセレクション(東京国際フォーラム/東京)
2006 アートin福寿会館(福山市福寿会館/福山)
2009 浜口陽三生誕100年記念銅版画大賞展(ミュゼ浜口陽三ヤマサコレクション/東京)
2010 第11回岡山芸術文化賞準グランプリ
2013 Art Court Frontier 2013 #11(アートコートギャラリー/大阪)
2013 天プラ・セレクション vol.57「榎真弓展 それらのあいだにも。」(岡山県天神山文化プラザ/岡山)
その他個展グループ展多数
榎 真弓 WEBサイト
出品一覧
タイトル|技法/素材|サイズ(cm/縦×横×奥行き)|制作年 Pile Scale|ミクストメディア/木|106×6×3|2013
胚の直観Ⅱ|凹版画4色4版、フォトポリマーグラブール/紙|36 × 24(イメージサイズ)|2009
胚の直観 III|凹版画4色4版、フォトポリマーグラブール/紙|36 × 24(イメージサイズ)|2009
Seascape(besides)unframed ver.|凹版画4色4版、フォトポリマーグラブール/紙|20×18|2011
あなたになっているかもしれない。|ミクストメディア/段ボール箱、椅子|サイズ可変|2014
それらのあいだにも。|ミクストメディア/試験管、木、ゴム|35.5×15×9|2013
Untitled(Cheque)|ミクストメディア/紙箱、紙|9.5×21×4|1992-2014
Seascape(water surface)|ミクストメディア/段ボール紙、レズン、プリントした和紙|28×27|2013
Untitled(Water Mummy)|ガラス瓶、ウレタン樹脂、石、木炭|33.5×φ7|2013
Body Facts #3 ver.2|ミクストメディア/インクジェット、布、アクリルケース|61 ×51×8.5|2002-2014
Corpus-Gurdian|ミクストメディア/薄葉紙、オイル、木、虫ピン、コロ|35×37×22|2013
Corpus-19|ミクストメディア/薄葉紙、オイル、荷車|サイズ可変|2014
すべての生き物のために|凹版画4色4版、フォトポリマーグラブール/紙|76×57|2013
いぬが通ったあとの小さな風ver.1|凹版画4色4版、フォトポリマーグラブール/紙|76×57|2013
Coney Doe|凹版画3色3版、フォトポリマーグラブール/紙|76×57|2013
いちばんの他者|凹版画4色5版、フォトポリマーグラブール/紙|76×57|2009/2013
みかえる|凹版画3色3版、フォトポリマーグラブール/紙|76×57|2013
鹿の声 ver.2|凹版画3色3版、フォトポリマーグラブール/紙|76×57|2013
ダリア1607|凹版画4色4版、フォトポリマーグラブール/紙|76×57|2013
満てる。|凹版画1色1版、エッチング/紙|122×80.5|2008
未てる。|凹版画1色1版、エッチング/紙|122×80.5|2008
Water Mummy-N のしんぞう|ミクストメディア/合成樹脂、シャーレ|7×φ25|2013
Water Mummy-N のしんぞう #1|ミクストメディア/合成樹脂、シャーレ|7×φ25、4×φ16|2013
すべてと。なにもないこと。|コンクリートブロック、合成樹脂|70×39×19|2014
Untitled (dustpan & light)|ミクストメディア/トタン製チリトリ、蛍光灯|46×35×28|2014
Untitled (hardware #1)|写真/Agfa 印画紙|20×12.5|1989
Black Piece|凸版画1色1版/フォトポリマーグラブール、紙|20.2×40.3|2011
Body Facts #1 ver.2|ミクストメディア/インクジェット、布、アクリルケース|30×180×15|2002-2014
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本記事は、平成25年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。
発行日:平成26年3月31日
発行:岡山県天神山文化プラザ
編集:福田淳子(岡山県天神山文化プラザ)
デザイン:安藤一生(一生堂)
撮影:池田理寛(D-76)
会場照明:池田正則(岡山県天神山文化プラザ)
印刷:株式会社 三浦印刷所
<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>
平成25年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集
岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2013年7月31日〜2014年3月30日の期間に開催された8人の個展の記録集として発行したものです。
<目次>
北川太郎 彫刻展|天プラ・セレクションVol.51
岡村勇佑展|空の青さと海の青さへ|天プラ・セレクションVol.52
近藤真生 映像展|Butterfly.f|天プラ・セレクションVol.53
山本誠展|実在と記憶|天プラ・セレクションVol.54
あだち幸 友禅画展|絹地に奏でるミクロコスモス―光曼荼羅|天プラ・セレクションVol.55
中山秀一展|記憶のレイヤード|天プラ・セレクションVol.56
榎真弓展|それらのあいだにも。|天プラ・セレクションVol.57
鳥越眞生也 作品展|あにまるまにあ|天プラ・セレクションVol.58
カラー48ページ
税込1,000円
お問い合せ
〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ
TEL 086-226-5005
FAX 086-226-5008
メール tenplaza@o-bunren.jp
受付時間 9:00~18:00
休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)
「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。
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