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中山 秀一 展|記憶のレイヤード|天プラ・セレクションVol.56

更新日:4月16日



今回の天プラ・セレクションにおいては、第3展示室・中二階展示室・第4展示室の一連の空間の「見立て」からはじまりました。

普段、海岸で制作を行うことの多い私は、中二階展示室を小高い「岬」とし、眼下に広がる第3展示室にいつもの見慣れた海岸を、第4展示室に現代の都市を想定しました。

第3展示室は、鑑賞者の歩行や室内の気温・湿度等の様々なエイジングを受けながら、日々異化してゆく【動的な場所の総体を表現することが重要でした。また、第4展示室は「3.11東日本大震災」後のメディア上の言語空間が圧倒的な物量とスピードで更新されてゆく様を【静的】な場所の総体として表現することを目的としていました。そしてこの全体を見渡すことのできる中二階展示室の「岬」という場所は、私たちにとってどういう場所なのかということを、半ば宙吊りの状態で提示しておく事も重要でした。


記憶のレイヤードとは「この自然がどこまでも自分自身である」と感じた時、ふと浮かびあがる〈私〉と〈物質)の交配の記録模様のようなものであると思っております。


中山秀一



2001年8月、高梁川河川敷。真夏の暑さを避け、午前3時からの作業を2週間余り続けて作られた“河原の石による大きな円”。その“円”はそのまま置かれ、中山は自転車で沖縄へ。 “円”は半年後には釣り人の車の轍のあとが残り大きく変形していた。そして、いつの間にか跡形もなく消えた。

2013年12月、天神山文化プラザ第3・4展示室。中山は独特でダイナミックな展示を軽々とやって見せてくれた。展示作業2日目に訪れた時、シャープで静かな美しい砂の絵が第3展示室の床全体を覆っていた。第4展示室には、氾濫したかのような文字群“日本”が大理石の砂によって完成しつつあった。

中山のフィールドである沖縄の海岸は、随分広々とした所だ。それに比べたら第3・4展示室は大した広さではない。今までは、“作り上げた作品が消えていって”くれるために、波という自然の持つ大きな力に協力してもらっていた。今回はそれがない。どうするんだろう?と少々危懼してはいた。だが…。訓練を施され、近代化してしまっている我々人間にでさえ、少なからず自然性が残っていること。室内にも温度・湿度・風という自然現象が存在すること。これらに着目していたことを知り、危懼はあっさり消えた。乾燥による砂絵の変化。人(来場者)が歩くことによって起る変化。その過程で生じる音…。それらが展示会場に新しい出来事を発生させ、来場者に新しい知覚経験を提供する。

最終日のパフォーマンスは圧巻で、上記のことを明確化した。大理石の砂で描かれた氾濫文字群“日本”の上での舞踏が、ノイズと共に力強い痕跡を残し、舞踏するその人が物質(自然)そのものでもあることを見せてくれた。

中山は、表現という私性の強い狭い地点からではなく、もう少し違った地点、たとえば「純粋な自然の贈与」の中沢新一や「カオスモスの運動」の丸山圭三郎などの立つ、現代社会のかかえる様々な病理からの脱却を目指す地点に立って行為しているのではないだろうか。


美術家/天プラ・セレクション推薦委員 岡部玄


岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.56 中山秀一展 記憶のレイヤード

[会期]2013年12月4日(水)〜12月8日(日)

[会場]岡山県天神山文化プラザ 第3・4展示室


中山 秀一

1971年生まれ

九州共立大学 建築学科中退


現在 沖縄県在住


グループ展

1993 「すっくす」(倉敷市立美術館/岡山)

1994 「雑魚展」(北九州市黒崎井筒屋ブックセンター/福岡)

1995 「すっくす」(北九州市立美術館 / 福岡)

1997 「夜の鳥瞰図」(福岡小倉バードマンハウス/福岡)

2001 「すっくす」(岡山県総合文化センター/岡山)


個展

2004 「漂向展」(沖縄前島アートセンター/沖縄)

2013 天プラ・セレクション vol.56 「中山秀一展 記憶のレイヤード」 (岡山県天神山文化プラザ/岡山)


公開制作

2008 「名桜大学公開講座」公開制作 / 安波

2009 「名桜大学公開講座」公開制作/名護市

2009 「アジア青年の家2009」公開制作/沖縄・那覇市・自治会館

2012 「芸術と科学で自然を観る Vol.4」/名桜大学公開講座・制作


中山 秀一 WEBサイト

出品一覧

タイトル|技法/素材|サイズ(cm/縦×横×奥行き)|制作年 砂況A|インスタレーション/川砂|サイズ可変|2013

トラッキング|インスタレーション/川砂|サイズ可変|2013

砂況B|インスタレーション/寒水石|サイズ可変|2013

記憶のレイヤード|映像|サイズ可変|2013

クロージングセレモニー「然」|パフォーマンス(演出:筆本聡、役者:山本謙、照明:岸田豊)|サイズ可変|2013

 

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事務局経由で受け付ける




 

本記事は、平成25年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。


発行日:平成26年3月31日

発行:岡山県天神山文化プラザ

編集:福田淳子(岡山県天神山文化プラザ)

デザイン:安藤一生(一生堂)

撮影:池田理寛(D-76)

会場照明:池田正則(岡山県天神山文化プラザ)

印刷:株式会社 三浦印刷所

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成25年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2013年7月31日〜2014年3月30日の期間に開催された8人の個展の記録集として発行したものです。


<目次>

  • 北川太郎 彫刻展|天プラ・セレクションVol.51

  • 岡村勇佑展|空の青さと海の青さへ|天プラ・セレクションVol.52

  • 近藤真生 映像展|Butterfly.f|天プラ・セレクションVol.53

  • 山本誠展|実在と記憶|天プラ・セレクションVol.54

  • あだち幸 友禅画展|絹地に奏でるミクロコスモス―光曼荼羅|天プラ・セレクションVol.55

  • 中山秀一展|記憶のレイヤード|天プラ・セレクションVol.56

  • 榎真弓展|それらのあいだにも。|天プラ・セレクションVol.57

  • 鳥越眞生也 作品展|あにまるまにあ|天プラ・セレクションVol.58


カラー48ページ

税込1,000円


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。

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