あだち幸 友禅画展|絹地に奏でる ミクロコスモス―光曼荼羅|天プラ・セレクションVol.55



仏教では「万物は平等 生きとし生けるものすべてがほとけ」だと説かれます。

花も虫も動物も、それぞれところをえて、あるがままのいのちたちは美しく、世界はほとけで満ちているかに思えます。ところが、そのほとけたちを自分の都合で害獣・害虫・雑草などと名づけては駆除・処分。利用できるとみれば動物も山も川も利用し尽して。美しいはずのほとけの世界の秩序を踏みにじる人間という種が、なぜ、ほとけなのでしょうか。

たしかに、今日の科学技術の驚異的発展は人間の創造力のたまものではありますが、その成果は、ひたすら人間のために活用し、人間中心の文明を築きあげてしまった。人間は、一日も早く人間本来の“あるべき様”にめざめ、人間にしかない素晴らしい特性を生かして青く美しい地球を守り、あらゆるいのちとの共存をはかっていく。そういう方向に舵をきることが、ほとけの一員としての人間の役割・使命だと思うのです。月に星に空に、海山に川に、ほとけは満ち満ちて…花の笑まいは花の仏、小鳥のさえずりには鳥の仏、月にいざなわれれば月の仏。あるがままのほとけたちはなにを描いても仏です。

私の場合、内にほとけを秘めながら我欲が邪魔してなかなかほとけが輝き出ない、まどいの人間仏に魅かれます。ですから人の象でほとけを追求しているわけですが、描く本人が未だまどえる仏ですから、さてどのような仏様が画面に現れてくださるのか、おまかせです。


あだち幸



人を真に感動させるもののひとつに文化芸術がある。約80点を集め開催された本展では、真の感動を求め東北から九州に至るまで、老若男女延べ714人が訪れた。あだちは30数年にわたり、伝統的友禅染めを基にした「友禅画」の独自の境地を追求し、他の追随を許さない。京都、井原市美星で育まれた自己の清澄な内面を具現した心象風景を20余の行程をほぼ独りでこなしながら、ひたすら丁寧に格調高く紡ぎ出していく。あたかも蚕が命を絞りながら蘭(コクーン)を吐き出すように。それは「コクーン」をはじめ、「ほとけ」「鬼」「羅刹女伝」「サロメ」等のシリーズに見られるように、作者の求道精神、命の大切さを訴える魂の叫びがほとばしり出、京都壬生寺本堂障壁画にも看て取れる。あだちは連日会場に詰め、先の東北大震災で危うく一命を取り留めた方や地元美星の方々などに一人ひとり丁寧に心を込めて応対した。決して玄人受けを求めずに。

ここに芸術の原点がある。昨今、著名な賞を受けた若手現代作家、公募展で“選考の結果"賞を得た作家などに焦点を当てた企画が好まれがちで、作家も時流を得て「時分の花」となり、珍奇なアイデアと器用さに磨きをかける。だが、あだち作品のように普通の人々が会場を訪れ、いつまでも心の奥底に「残花」として沈潜し感動に浸り、明日へのエネルギーをもらう芸術が果たしてどれくらいあるだろうか。清澄な心を磨き、「まことの花」をめざし、初心を忘れることなくチャレンジし続けることの大切さを改めて想起させる展覧であった。


(公社)岡山県文化連盟顧問/天プラ・セレクション推薦委員 曽田章楷



岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.55 あだち幸 友禅画展 絹地に奏でる ミクロコスモス―光曼荼羅

[会期]2013年9月24日(火)〜9月29日(日)

[会場]岡山県天神山文化プラザ 第3展示室


あだち 幸

岡山県井原市美星町生まれ

大阪外国語大学英語科卒業

現在 井原市在住


主な活動

1985 第一回個展“ほとけたち"(京都クラフトセンター)

1988 壬生寺千体仏供養塔に「観音・日 観音・月」一対奉納

1995 第7回個展“絹にたくすほとけへの憧憬" (横浜高島屋美術画廊)

以後2012年まで高島屋大阪、大丸心斎橋、阪神百貨店、岡山丸善、天満屋高松などで個展 25回開催


2001 奈良円照寺に10代目御門跡山本静山尼肖像画納める

2003 読売新聞主催 名士名流展出品(2012年まで毎年)

2004 月刊PHP6月号に記事掲載

2005 月刊「致知」10月号に対談記事掲載

2007 京都壬生寺本堂障壁画完成

2009 奈良唐招提寺に屏風「同天の讃―讃仰鑑真和上」奉納

2010 壬生寺障壁画初公開(大阪髙島屋グランドホール NHK主催)

2012 Societe Nationale des Beaux Arts 主催 Salon de la SNBA,2012に日本代表招待作家として10点出品(会場 Le Carrousel du Louvre)

2013 天プラ・セレクションvol.55「あだち幸友禅画展 絹地に奏でるミクロコスモス―光曼荼羅」 (岡山県天神山文化プラザ/岡山)


著作

白の幻影(法蔵館)白い憧憬(学研)コクーンいのちの物語(吉備人)

著作、CDなどの表紙絵:梅原 猛著「仏教伝来」(プレジデント社)他多数

Nashville Opera シーズンパンフレット「サロメ」、テレビ出演 NHK教育テレビ「こころの時代」テレビ朝日、山陽テレビ他多数


あだち幸 WEBサイト

http://www.ibara.ne.jp/~adachi-m


出品一覧

タイトル|技法/素材|サイズ(cm/縦×横) 羅刹女伝より

速疾鬼|手描き友禅染/絹|79×34

絶望慟哭|手描き友禅染/絹|79×34

瞋恚|手描き友禅染/絹|79×34

憎悪|手描き友禅染/絹|79×34

よるべなき不安|手描き友禅染/絹|79×34

平安|手描き友禅染/絹|79×34

光明|手描き友禅染/絹|79×34

虚無|手描き友禅染/絹|79×34

嫉妬|手描き友禅染/絹|79×34

屈辱|手描き友禅染/絹|79×34

煩悩|手描き友禅染/絹|79×34

羅刹【座鬼】|手描き友禅染/絹|79×34


鬼シリーズ

Jealous Extacy1|手描き友禅染/絹|45×35

Jealous Extacy2|手描き友禅染/絹|45×35

Chain of Obligation|手描き友禅染/絹|50×38

Chain of Body|手描き友禅染/絹|55×38

Chain of Vanity|手描き友禅染/絹|52×37

火龍(サラマンドラ)|手描き友禅染/絹|150×68


サロメシリーズ

きらめく虚無|手描き友禅染/絹|117×82

首を所望するサロメ|手描き友禅染/絹|106×34

踊るサロメ|手描き友禅染/絹|154×91

扇のサロメ|手描き友禅染/絹|103×60

さまよえるサロメ|手描き友禅染/絹|94×63

月に嘲うサロメ|手描き友禅染/絹

水底のサロメ|手描き友禅染/絹|100×35


ほとけシリーズ

飛天|手描き友禅染/絹|86×300

無量光|手描き友禅染/絹|25×53

菩薩慟哭|手描き友禅染/絹|175×83

嘆きの菩薩|手描き友禅染/絹|165×77

銀河の子|手描き友禅染/絹|175×85

月宮の人(月)|手描き友禅染/絹|175×85

月修寺1(白衣)|手描き友禅染/絹|120×74

菩薩混沌|手描き友禅染/絹|175×85

仏眼仏母図|手描き友禅染/絹|210×110

華思惟2|手描き友禅染/絹|25×37

日輪の菩薩|手描き友禅染/絹|44×35

銀河の賦1|手描き友禅染/絹|34×58

銀河の賦2A|手描き友禅染/絹|32×57

天照のエナジー|手描き友禅染/絹|32×57

月宮の賦|手描き友禅染/絹|225×100

有明の菩薩|手描き友禅染/絹|110×36

いのちきわみなし|手描き友禅染/絹|210×100

月華|手描き友禅染/絹|165×77

月華(半身)|手描き友禅染/絹|86×60

聖炎|手描き友禅染/絹|46×34

黎明|手描き友禅染/絹|44×60

輪廻再生のエナジー|手描き友禅染/絹|59×36

天平の光―月|手描き友禅染/絹|37×31

天平の光―日|手描き友禅染/絹|36×29

茜の菩薩|手描き友禅染/絹|108×61

天に咲く|手描き友禅染/絹|50×116

観世音はるか|手描き友禅染/絹|102×52

殺すなかれ生ましむなかれ(不動明王)|手描き友禅染/絹|180×90

観音星A|手描き友禅染/絹|45×34

観音星B|手描き友禅染/絹|45×34

明珠不生 薬師|手描き友禅染/絹|270×100

明珠不生|手描き友禅染/絹|175×90

明珠不生|手描き友禅染/絹|175×90

明珠不生|手描き友禅染/絹|175×90

明珠不生|手描き友禅染/絹|175×90

星影|手描き友禅染/絹


コクーンシリーズ

コクーン/その昔私にも1|手描き友禅染/絹|28×60

コクーン/いのちいのちいのち(空)|手描き友禅染/絹|50×34

コクーン/いのちいのちいのち(海)|手描き友禅染/絹|44×35

コクーン/たったひとつの命さえ|手描き友禅染/絹|38×28

コクーン/ だいじょうぶ だいじょうぶ|手描き友禅染/絹|37×30

コクーン/生きていくことA|手描き友禅染/絹|115×64

コクーン/夢想|手描き友禅染/絹|48×74

コクーン/生まれること|手描き友禅染/絹|115×64

コクーン/幻遊|手描き友禅染/絹|51×34

コクーン/ここにいるよ(宙)|手描き友禅染/絹|42×33

コクーン/萌えいずる|手描き友禅染/絹|42×32

コクーン/風の道|手描き友禅染/絹|45×35

コクーン/風薫る|手描き友禅染/絹|45×35

コクーン/ありがとうの岸辺|手描き友禅染/絹|32×52

コクーン/森の風鈴|手描き友禅染/絹|45×35

コクーン/葉っぱ浄士|手描き友禅染/絹|75×49

コクーン/祝福|手描き友禅染/絹|48×33

コクーン/ここにいるよ猫|手描き友禅染/絹|28×27

コクーン/祈り|手描き友禅染/絹

コクーン/お母さんへ|手描き友禅染/絹|42×34

 

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本記事は、平成25年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。

発行日:平成26年3月31日

発行:岡山県天神山文化プラザ

編集:福田淳子(岡山県天神山文化プラザ)

デザイン:安藤一生(一生堂)

撮影:池田理寛(D-76)

会場照明:池田正則(岡山県天神山文化プラザ)

印刷:株式会社 三浦印刷所

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成25年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2013年7月31日〜2014年3月30日の期間に開催された8人の個展の記録集として発行したものです。


<目次>

  • 北川太郎 彫刻展|天プラ・セレクションVol.51

  • 岡村勇佑展|空の青さと海の青さへ|天プラ・セレクションVol.52

  • 近藤真生 映像展|Butterfly.f|天プラ・セレクションVol.53

  • 山本誠展|実在と記憶|天プラ・セレクションVol.54

  • あだち幸 友禅画展|絹地に奏でるミクロコスモス―光曼荼羅|天プラ・セレクションVol.55

  • 中山秀一展|記憶のレイヤード|天プラ・セレクションVol.56

  • 榎真弓展|それらのあいだにも。|天プラ・セレクションVol.57

  • 鳥越眞生也 作品展|あにまるまにあ|天プラ・セレクションVol.58


カラー48ページ

税込1,000円


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。