top of page

山本 誠 展|実在と記憶|天プラ・セレクションVol.54

更新日:4月16日



展示する会場を初めて見た時、伝統ある天神山文化プラザの外観とは対象的で、とてもスタイリッシュな空間だと感じました。

どんな展示にしようかとしばらく考えましたが、なかなか煮詰まらず時間が過ぎてゆきました。ふと、最初に感じた会場の印象を思い出し、いろいろと欲張りすぎていた自分に気付きました。会場に合わせて、作品サイズや点数をギリギリまで制限して、シンプルでスタイリッシュな展示にしようと決めました。


制作する上で重要なことは、人生における様々な経験だと考えています。その中で、私がリアルと捉えたことやリアルに感じたものを、画面の中で再構築しています。例えば、人物がぶれた様な作品、透けた作品、空間が歪んだ作品、視点をずらした作品があります。現実には存在しない光景ですが、私のフィルターを通すとリアルなものに感じられる為、このような表現となっています。


山本誠



山本誠にとっての現実とは、画布の中でこの世の新たな視点を獲得することなのか。リアルな表現という言葉には多義的な意味が含まれる。作家にとって、そのリアルを求めての試行錯誤の痕跡が一つの作品として現前してくる。山本誠の額縁の無い窓の絵の連作は、同じ窓から見た俯瞰する風景を、視点や時間、遠近法の微妙なズレを意識的に画面に持ち込むことによって不思議な光景を創出している。

窓の内側には一人の髪の長い女性の後ろ姿が描かれている。描かれてはいるがその女性は既にそこを立ち去っていて、残像としての仮の姿がそこにあるだけのように見える。過ぎ去った時間の記憶が今の時間と重なり、二つの異なる時間が画面に流れる。

曖味な手の形やそのブレが、人物像をとおして透けて見える室内の梁や窓枠の細工が、画面全体の写実的な表現によって、より違和感を感じさせる空間構成となっている。

テンペラと油画の混合技法によって描かれた山本誠の絵画は、独特の乾燥したイメージを私達に呼び起こす。古風な画面作りを装いながら、リアルな表現の可能性を試みる山本誠の困難な仕事にこれからも注目していきたい。

版画家/天プラ・セレクション推薦委員 髙原洋一



岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.54 山本誠展 実在と記憶

[会期]2013年9月17日(火)〜9月22日(日)

[会場]岡山県天神山文化プラザ 第4展示室


山本 誠

1973 岡山県生まれ

1998 武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業


現在赤磐市在住


個展

2010 第42回昭和会展受賞記念「山本誠展」(日動画廊/東京)

2011 「山本誠展」(アートガーデン/岡山)

2013 天プラ・セレクション vol.54 「山本誠展 実在と記憶」(岡山県天神山文化プラザ/岡山)


グループ展

2005 国際アートシンポジウム in 長崎 企画展

2006 日本アートアカデミー賞入賞記念展(アートコムギャラリー/大阪)

2008 太陽展(日動画廊/東京) '09 '10 '11 '12 '13

2009 日動展(日動画廊/東京) '11 '12

2009 ミニヨン展(日動画廊/東京) '10 '11 '12

2009 現代洋画展(日動画廊/福岡) '10 '11


賞歴

2003 雪梁社フィレンツェ賞展佳作賞('06)

2005 日本アートアカデミー賞準グランプリ

2006 青木繁記念大賞展入選

2007 第42回昭和会展日動画廊創業80周年記念特別賞

2013 第1回ホキ美術館大賞展 大賞


出品一覧

タイトル|技法/素材|サイズ(cm/縦×横×奥行き)|制作年

ある日の午後|油彩、テンペラ/白亜地|162.0×162.0|2013

昼下がり|油彩、テンペラ/白亜地|162.0×130.3|2013

夢の中|油彩、テンペラ/白亜地|162.0×112.0|2013

癒しをもとめて|油彩、テンペラ/白亜地|60.6×60.6|2013

すてきな場所|油彩、テンペラ/白亜地|60.6×60.6|2013

宵の夢|油彩、テンペラ/白亜地|60.6×50.0|2013

お気に入りの場所|油彩、テンペラ/白亜地|45.5×38.0|2013

お気に入りの場所|油彩、テンペラ/白亜地|33.3×22.0|2013

お気に入りの場所|油彩、テンペラ/白亜地|33.3×22.0|2013

お気に入りの場所|油彩、テンペラ/白亜地|33.3×22.0|2013

お気に入りの場所|油彩、テンペラ/白亜地|33.3×22.0|2013

お気に入りの場所|油彩、テンペラ/白亜地|33.3×22.0|2013

お気に入りの場所|油彩、テンペラ/白亜地|33.3×22.0|2013

 

サイト訪問者からの連絡受付

事務局経由で受け付ける




 

本記事は、平成25年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。


発行日:平成26年3月31日

発行:岡山県天神山文化プラザ

編集:福田淳子(岡山県天神山文化プラザ)

デザイン:安藤一生(一生堂)

撮影:池田理寛(D-76)

会場照明:池田正則(岡山県天神山文化プラザ)

印刷:株式会社 三浦印刷所

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成25年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2013年7月31日〜2014年3月30日の期間に開催された8人の個展の記録集として発行したものです。


<目次>

  • 北川太郎 彫刻展|天プラ・セレクションVol.51

  • 岡村勇佑展|空の青さと海の青さへ|天プラ・セレクションVol.52

  • 近藤真生 映像展|Butterfly.f|天プラ・セレクションVol.53

  • 山本誠展|実在と記憶|天プラ・セレクションVol.54

  • あだち幸 友禅画展|絹地に奏でるミクロコスモス―光曼荼羅|天プラ・セレクションVol.55

  • 中山秀一展|記憶のレイヤード|天プラ・セレクションVol.56

  • 榎真弓展|それらのあいだにも。|天プラ・セレクションVol.57

  • 鳥越眞生也 作品展|あにまるまにあ|天プラ・セレクションVol.58


カラー48ページ

税込1,000円


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。

bottom of page