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近藤 真生 映像展|Butterfly.f|天プラ・セレクションVol.53

更新日:3 日前



片羽の蝶をモチーフとした映像作品 Butterfly.f では、発生と消滅を繰り返しながら絶えず流動する世界を描き出すことによって、そこに宿る創造的な可能性を提示しました。

これは不完全であるからこそ生まれる運動性が私たちを含めたこの世界の本質であるということの現れでもあります。

世阿弥が能で昇華させた「幽玄」、M・デュシャンが示した「4次元」などとも共通項がありますが、それらを踏襲したオリジナルコンセプトとして「フラジャリスティカ」と名付けました。

今回の展覧会はフラジャリスティカの具現化においてひとつの到達点であったと同時に、新たな可能性に満ちた原石のようなものになったと感じています。

これからも普遍的な美しさを求め、作品を進化/深化させていきます。


近藤真生



近藤の制作過程は「フラジャイル」ではない。

それは彼の映像制作手法がコンピューターを用いたものであることからも分かる通り、そのツールの成り立ちと同様に、その制作においては不明確さがあってはならないからだ。全ては彼の脳、思考、指示した通りに映像は生成され、それ以上でもそれ以下でもない結果となって眼前に現れることになる。ディスプレイに映し出された結果は、視覚を通したフィードバックによって選択が行われ組み合わされる。音もまた視覚を聴覚に変えて同様に行われる。

近くに、そして遠くに、現れては消える蝶の羽、その連なり。不完全であること、壊れやすく、傷つきやすいといった意味とされる「フラジャイル」という言葉から広げる彼の思い。繰り広げられる甘美なイメージ、映像と音の組み合わせにのみ注目するだけでは大切な何かを見落としてしまうのではないだろうか。

今回、会場では風に揺らぐ布に投影される展示が試みられた。

風による布のゆらぎは、作者のみの自己完結を許さない。表現の中に不確定な要素が組み込まれることによって、近藤の言う「不完全であるからこそ獲得できる何か」は、ここに体現されたのではないだろうか。不安定なスクリーンは、観者により注目することを要求する。それは他者を自ずから導き入れるあらたな社会との関係の作り方、関わりの一つの姿、表現となったように思うのだ。


美術家/天神山文化プラザ企画委員 森山知己


岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.53 近藤真生 映像展 Butterfly.f

[会期]2013年8月13日(火)〜8月18日(日)

[会場]岡山県天神山文化プラザ 第4展示室


近藤 真生

1974年 岡山市に生まれる

映画やTVCM などの音楽を幅広く手がける一方、2006年より映像作品の制作を開始。


現在 岡山市在住


個展

1999 「フロム・パーソナルコンピュータ」(楽土館/岡山)

2013 天プラ・セレクション vol.53「近藤真生 映像展 Butterfly.f」(岡山県天神山文化プラザ/岡山)


グループ展

1993 「Go,,ing」(ギャラリー 21/岡山)

2002 「RESONANCE」(LAPIN ET HALOT/東京)

2006 「ルネスの森の物語」(ルネスホール/岡山)

2012 「2013年度 天プラ・セレクション公募作家選考展」(天神山文化プラザ/岡山)

2012 「岡山映画祭」(岡山シティミュージアム/岡山)

2013 「GEISAI#19」(都立産業貿易センター台東館/東京)

2013 「GEISAI#19 Point Ranking 2位、3位 ふたり展」(Hidari Zingaro/ 東京)

2014 「KONICA MINOLTA エコ&アートアワード 2014 作品展」(コニカミノルタプラザ/東京)


受賞歴

2012 坂本龍一のラジオ番組 J-Wave Radio Sakamoto のオーディションに入選

2012 岡山県天神山文化プラザ 2013年度 天プラ・セレクション作家選出

2013 GEISAI#19 Point Ranking 2位入賞

2014 KONICA MINOLTA エコ&アート アワード 2014 準グランプリ受賞


クライアントワーク

2002 大木裕之監督「G8」サウンドトラック提供

2003 バレエダンサー熊川哲也オフィシャル Webサイトデザイン担当

2003 NEC 携帯電話プロモーションムービーサウンドトラック担当

2005 ベネッセコーポレーション「直島展」ムービーサウンドトラック担当

2009 浦安ブライトンホテルスイートフロアおよび各客室の環境音楽を担当

2012 Inward as DJ Pizz 1st アルバム「Riverside Reverse」にリミックス提供


出品一覧

タイトル|技法/素材|サイズ(cm/縦×横×奥行き)|制作年

Butterfly.f #001-#010 |Video/プロジェクター・40インチテレビモニタ5台・布|サイズ可変|2012-2013

 

サイト訪問者からの連絡受付

事務局経由で受け付ける




 

本記事は、平成25年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。


発行日:平成26年3月31日

発行:岡山県天神山文化プラザ

編集:福田淳子(岡山県天神山文化プラザ)

デザイン:安藤一生(一生堂)

撮影:池田理寛(D-76)

会場照明:池田正則(岡山県天神山文化プラザ)

印刷:株式会社 三浦印刷所

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成25年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2013年7月31日〜2014年3月30日の期間に開催された8人の個展の記録集として発行したものです。


<目次>

  • 北川太郎 彫刻展|天プラ・セレクションVol.51

  • 岡村勇佑展|空の青さと海の青さへ|天プラ・セレクションVol.52

  • 近藤真生 映像展|Butterfly.f|天プラ・セレクションVol.53

  • 山本誠展|実在と記憶|天プラ・セレクションVol.54

  • あだち幸 友禅画展|絹地に奏でるミクロコスモス―光曼荼羅|天プラ・セレクションVol.55

  • 中山秀一展|記憶のレイヤード|天プラ・セレクションVol.56

  • 榎真弓展|それらのあいだにも。|天プラ・セレクションVol.57

  • 鳥越眞生也 作品展|あにまるまにあ|天プラ・セレクションVol.58


カラー48ページ

税込1,000円


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。

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