あらかじめイメージした完成形に向けて制作するのではなく、制作の中でイメージを膨らませ作品を造っています。
勿論、どういった感じにしたいといった漠然としたイメージは持って制作を始める訳ですが、自分でもどんな作品になるかは完成するまで分かりません。素材となる石の魅力、環境や自分自身の考え方などが作品に影響してきます。
私はこうして出来上がった作品が大好きですが、個展として作品を見て頂く事は怖いです。
怖さを克服し、より魅力ある造形を生み出す為にも、自分自身の成長が不可欠だと感じております。
北川太郎
会場にはここ数年間の仕事が一体となって示されていた。すべての作品は床に直に置かれ、静かな石庭のようだった。北川太郎の作品を見ながら、私の中で時は行きつ戻りつした。中でも、「静けさ」と題された一連の新作には濃密な時の堆積が感じられ、それらはペルーから帰った北川が大きな変化を遂げつつあることを告げていた。
その初期から、北川の作品は見るものの記憶を刺激する神秘性を含んでいたが、その特性はより鮮明になってきているようだ。また、展示においても照明には細やかな配慮がされていたが、おそらく北川にとっては光と作品の微妙な絡みが生み出す陰影も重要な彫刻の要素 になっているのだろう。作品にそそぐ光は、人工灯でありながら遠い過去から届いたかのような懐かしさが含まれていた。
つぶやくようなノミ跡で表面を刻み、細かな石英の反射で光を小さな粒に変える北川の手法は、素材とする黒い花崗岩の持ち味を理解した成果だろう。それらは薄暗い展示室の中で、私にこれらの石の生成期を想わせた。
確かに、北川は石と対話することを早くから身につけ、石に語らせる方法を知っている。北川太郎という彫刻家は、時代や社会に振り回されることなく、太古から人が石を刻み続けてきた営みを受け継ぐ人種なのかもしれない。
姫路市立美術館 岸野裕人
岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.51 北川太郎 彫刻展
[会期]2013年7月31日(火)〜8月4日(日)
[会場]岡山県天神山文化プラザ 第3展示室
北川 太郎
1976 兵庫県に生まれる
2000 金沢美術工芸大学彫刻専攻卒業
2007 愛知県立芸術大学大学院彫刻専攻修了
2007〜2010 文化庁新進芸術家在外研修員(3年派遣員)
現在 京都府在住
京都文教短期大学 講師、倉敷芸術科学大学 非常勤講師
個展
2007 博物館明治村旧帝国ホテル/犬山市
2010 Museo Pedro de OSMA/ペルー
2011 クスコ市立現代美術館/ぺルー
2012 ギャラリーせいほう/東京
2013 天プラ・セレクション vol.51 「北川太郎 彫刻展」 (岡山県天神山文化プラザ/岡山)
2013 西脇市岡之山美術館/兵庫
賞歴
2000 アートタウン三好彫刻フェスタ特選
2001 アートタウン三好彫刻フェスタ グランプリ
2003 第1回キリンアートコンクール大賞
2005 あまがさき平和モニュメントデザインコンペ 優秀賞
2006 石のさと彫刻コンクール最高賞
2011 神戸ビエンナーレ高架下プロジェクト特別賞
2012 The 17th Da Dun Fine Arts Exhibition of Taichung City/台湾、台中市 1位賞受賞、Da Dun Prize
2013 I氏賞選考展 奨励賞
シンポジュウム
2006 石の国際彫刻シンポジュウム/高松市 招待参加
2008 DIDIM 国際彫刻シンポジュウム/トルコ 招待参加
北川 太郎 WEBサイト
出品一覧
タイトル|技法/素材|サイズ(cm/縦×横×奥行き)|制作年
時空ピラミッド|黒御影石、赤トラバーチン、ボンド|140×100×40|2011
時空ピラミッド|トラバーチン、赤トラバーチン、ボンド|135×100×35|2011
時空ピラミッド|トラバーチン、赤トラバーチン、ボンド|135×100×35|2011
時空ピラミッド|白御影石、黒御影石、ボンド|95×65×65|2011
時空ピラミッド|黒御影石、ボンド|85×95×65|2011
時空ピラミッド|白御影石、ボンド|185×45×30|2012
静けさ|黒御影石|60×30×30|2012
静けさ|黒御影石|20×95×60|2013
静けさ|黒御影石|20×40×20|2013
静けさ|黒御影石|110×30×20|2013
静けさ|黒御影石|15×45×45|2013
時空の種子|黒御影石、赤トラバーチン、ボンド|30×50×40|2012
時空の種子|黒御影石、ボンド|35×45×30|2012
時空の種子|黒御影石、ボンド|25×40×35|2012
時空の種子|大理石、ボンド|25×40×35|2013
机上影刻|石|20×105×105|2007
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本記事は、平成25年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。
発行日:平成26年3月31日
発行:岡山県天神山文化プラザ
編集:福田淳子(岡山県天神山文化プラザ)
デザイン:安藤一生(一生堂)
撮影:池田理寛(D-76)
会場照明:池田正則(岡山県天神山文化プラザ)
印刷:株式会社 三浦印刷所
<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>
平成25年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集
岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2013年7月31日〜2014年3月30日の期間に開催された8人の個展の記録集として発行したものです。
<目次>
北川太郎 彫刻展|天プラ・セレクションVol.51
岡村勇佑展|空の青さと海の青さへ|天プラ・セレクションVol.52
近藤真生 映像展|Butterfly.f|天プラ・セレクションVol.53
山本誠展|実在と記憶|天プラ・セレクションVol.54
あだち幸 友禅画展|絹地に奏でるミクロコスモス―光曼荼羅|天プラ・セレクションVol.55
中山秀一展|記憶のレイヤード|天プラ・セレクションVol.56
榎真弓展|それらのあいだにも。|天プラ・セレクションVol.57
鳥越眞生也 作品展|あにまるまにあ|天プラ・セレクションVol.58
カラー48ページ
税込1,000円
お問い合せ
〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ
TEL 086-226-5005
FAX 086-226-5008
メール tenplaza@o-bunren.jp
受付時間 9:00~18:00
休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)
「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。
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