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光延 由香利 展|山が在ること|天プラ・セレクションVol.47

更新日:4月16日



今回の展示に際して最も気を使ったのは、会場の構成でした。私が近年描いている「山」の姿を通し、大小様々な生命が集合して大きなエネルギーを生み出している、その圧倒的なスケール感をなんとか表現できないものかと頭を捻りました。まずはプレゼンテーションの段階から企画していた「明・暗の2部構成」により、明るい外界から眺める山と、その中に分け入っていく時の視点と感覚の変化を、鑑賞者に感じてもらえるように配慮しました。

次に、天プラセレクションの利点である会場の広さを活かし、山の持つスケール感を十分に感じられる空間づくりを目指しました。作品のサイズにメリハリをつけ、必要最小限の点数に絞ることで、押し付けにならず適度なリズムをつけることが出来たのではないかと思います。

そして何より重要だったのは、作品にどれだけ心血注げるかというところでした。私の用いる混合技法のテンペラというのは、細い線を織るように重ねていくものです。正直なところ不器用なので、山への畏敬の念と執着心で精いっぱい描きました。実際の展示を終えて、自省する点も多々ありますが、普段と違う考え方で個展に臨むことができ、始終楽しかったと思います。ここからまた新たな一歩が踏み出せそうです。


光延由香利



粘り強く、したたかな作家である。この印象はゼミ生であった学生時代から変わらない。 おそらく絵に対する彼女なりの強い信念がそのような印象を生むのだろう。

かつて県展や関西一陽展で一般部門の最高賞を受賞していた頃は、若い女性像に和風のモチーフを絡めた、写実と装飾が融合したような画面であった。その後人物は消え、風景画へと転身する。それまでの画風で一定の評価を得ていただけに、この転身は傍目には無謀とも思えた。しかし昨年の県展に応募してきた作品を見て、その懸念は吹き飛んだ。

そこには確固たる信念に支えられた造形世界が、静かではあるが力強く展開されていた。その直後の『しんわ美術展』でグランプリを射止めたのも納得である。


そして今回、作家は山への思いを結実させた300号の意欲作や4つに分けられた円形画面を中心にしたインスタレーションにも挑戦している。展示した作品数は少ないが、作家の自然や環境への思いが小画面にも大画面にも息苦しいまでに凝縮されていて、平面でありながら奥行きを感じさせることのできる絵画というメディアの可能性を楽しんでいる、という感がした。

若い作家の新しい始まりに立ち会えることは喜びであり、刺激であり、脅威でもある。


一陽会委員、岡山県美術展審査員、岡山大学大学院教授 泉谷 淑夫


岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.47 光延由香利展 山が在ること

[会期]2012年8月14日〜8月19日

[会場]岡山県天神山文化プラザ 第4展示室


光延 由香利

1980 岡山市に生まれる

2005 岡山大学大学院美術教育専攻 修了


現在 金光学園中学・高等学校 非常勤講師


個展

2006 ギャラリーひらた(笠岡市)

2008 アトリエ・ゼット(岡山市)

2009 ワコーミュージアム内備陽美術協会コーナー (笠岡市)

2010 アトリエ・ゼット 以後毎年(岡山市)

2012 天プラ・セレクション vol.47「光延由香利展 〜山が在ること〜」(岡山県天神山文化プラザ/岡山市)


グループ展

2005 Individualists展(里庄町) 以降毎年

2013 第6回岡山県新進美術家育成「I氏賞選考作品展」出品 ほか多数


賞歴

2002 しんわ美術展 奨励賞

2004-2009 関西一陽展・一陽展にて受賞多数

2006 岡山県美術展 山陽新聞社賞

2010 FUKUIサムホール美術展 佳作賞

2011 ガレリア・レイノ大賞展 入選、岡山県美術展 岡山市長賞、しんわ美術展 グランプリ

2013 第6回岡山県新進美術家育成I氏賞 奨励賞


光延 由香利 WEBサイト

出品一覧

タイトル|素材/技法|サイズ|制作年|所蔵

朝陽昇る山|白亜地、銀箔/油彩、テンペラ|162.0×390.9cm|2012|作家蔵

ココロヤマ|白亜地、銀箔/油彩、テンペラ|91.0×116.7cm|2011|作家蔵

冬の朝|白亜地、銀箔/油彩、テンペラ|27.3×22.0cm|2012|個人蔵

雨上がる|白亜地、銀箔/油彩、テンペラ|27.3×22.0cm|2012|作家蔵

|白亜地、銀箔/油彩、テンペラ|27.3×22.0cm|2012|作家蔵

アメヤマ|白亜地、銀箔/油彩、テンペラ|91.0×91.0 cm|2011|しんわ文化財団蔵

木漏れ日|白亜地/油彩、テンペラ|22.7×15.8cm|2012|個人蔵

|白亜地、葉/油彩、テンペラ|直径 約200.0cm(4枚設置時)|2012|作家蔵


 

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本記事は、平成24年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。


発行:岡山県天神山文化プラザ

発行日:平成25年3月31日

編集:髙原洋一(岡山県天神山文化プラザ企画委員)

   福田淳子(岡山県天神山文化プラザ学芸員)

デザイン:鳥越眞生也(鳥越屋)

撮影:加賀雅俊(べあもん)

印刷:株式会社 三浦印刷所

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成24年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2012年7月31日〜2013年1月13日の期間に開催された5人の個展の記録集として発行したものです。


<目次>

  • 宗友 実乃里 展|存在の証明|天プラ・セレクションVol.46

  • 光延 由香利 展|山が在ること|天プラ・セレクションVol.47

  • 三浦 和 展|Mix up|天プラ・セレクションVol.48

  • 長野 剛 展|天プラ・セレクションVol.49

  • 【特別展】曽我英丘の世界|星宿の空間 書の造形|天プラ・セレクションVol.50


カラー33ページ

税込1,000円


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。

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