高本 敦基 展|Note:日常性の現場から|天プラ・セレクションVol.41



この展覧会は、最初の打ち合わせから印象的でした。

第一回目の会議はあの震災の直後3月19日に開かれ、日本がこのままどうなってしまうのか、錯綜した情報と戦慄の中でプランを持って集まったことを鮮明に記憶しています。

かといって、何も出来ない無力さを思い知りながら…この時代に美術をする事はどういう事か、自問しながら制作を続けました。本展示プランとしては以前からあたためてきたものです。

パッケージに使われていたモールへの手いたずらから始まった『モール・ハウス プロジェクト』カップなど食器にチューブを通して水を繋げた『water_text』。等身大の自分が扱える日常的な素材や行動から作品世界を作り、社会と人間の繋がりを見いだしてゆくことが制作のコンセプトです。自分のいる「いま、ここ」という日常の一点を見据え、少しずつ世界に広げ、繋げていくことこそ、僕にとって現代に美術をする意味だと考えています。

最後になりましたが、観に来ていただいた方々には深く感謝しております。会期中に上陸した台風の暴風雨の時も多くの方々に観に来ていただきました。会場に足を運んでいただける有り難さを今一度噛み締めています。


高本敦基



展示空間にふわりと出現した黄色い絨毯とカーテン。近づくとそれらがふさふさのモールで作られた無数の「家」であることに気づく。家々はひしめき合いながら、大きくうねり、繋がり、床から天井へと伸びてゆく。「家」は5本のモールからなるシンプルな形状なので、数十体作れば手順は形式化されたという。深夜ラジオを聞きながら、友人と話をしながら、まるで編み物を編むように執拗に同じ行為が繰り返されたことだろう。しかし、不思議と作品からは作者の主観や感情的なものが感じられない。空間にぽんと投げ出されたような作品は、まるで子供のいたずらみたいにユニークで、見る者を開放する。

現在、高本は岡山県北部にある真庭市勝山で町を舞台とした様々なアートプロジェクトを展開している。2010年から始まった「岡野屋旅館プロジェクト」は、明治時代から地域で親しまれながらも閉館した旅館を美術で再生しようとするものだ。建物の地道な清掃作業から始まり、アーティストの展示公開に至るまで、様々な人々がこの建物に関わり、そこに刻まれた記憶に触れ、新たな場を生み出してゆく。人と建物の関わりは町の営みへと繋がり、新しい風土を生む。「モールハウスプロジェクト」は、高本が思い描く町の設計図かもしれない。

展示期間中、来場者がモールで作ったアイテムが館内に点在するようになり、会場ではそこに居合わせた人同士がモールをいじりながら楽しそうに話す姿をよく見た。嬉しそうに手首に巻いて持ち帰ったモールは、新しい場所で、他の誰かの記憶となるだろう。高本の作品に込められた意味は、こういった場で生じているように思えた。


天プラセレクション推薦委員/天神山文化プラザ学芸員 福田淳子


岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.41 高本敦基展 Note:日常性の現場から

[会期]2011年8月31日(水)〜9月4日(日)

[会場]岡山県天神山文化プラザ 第3展示室


高本 敦基

1980 広島県出身

2005 フランス国立ナンシー美術大学大学院修了(現代美術専攻)


展覧会

2003 高本敦基展(gallery doigt/金沢)

2004 E.PJapon展(メッス市内/フランス)

2005 アコーディオン・ア・プーシエール展(AUTRESENS/フランス)

2005 24人展(フォルバック炭坑跡地/フランス)

2009 こみまる展2009 (浜屋敷/大阪府)

2010 モールハウス プロジェクト 2010(カフェてあ/岡山)

2010 岡野屋旅館プロジェクト 2010 展(旧「岡野屋旅館」/岡山)

2010 てぁめぁて展(カフェてあ/岡山)

2011 天プラ・セレクション vol.41「高本敦基展 -Note: 日常性の現場から」(岡山県天神山文化プラザ/岡山)

2011 Living in Arts Project展(真庭市勝山地区/岡山)


プロジェクト・ワーク

岡野屋旅館プロジェクト2010~(旧「岡野屋旅館」/岡山)


出品一覧

タイトル|素材/技法/形状|サイズ(cm/縦×横×奥行き)|制作年

モール・ハウスプロジェクト|モール・インスタレーション|サイズ可変|2011

water_text|水、食器類、チューブ、台、展示会場付属応接セット・インスタレーション|サイズ可変|2011

岡野屋旅館プロジェクト・ドキュメント|写真、資料・ドキュメント|2010-2011


 

サイト訪問者からの連絡受付

事務局経由で受け付ける




 

本記事は、平成23年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。


編集・発行:岡山県天神山文化プラザ

発行日:平成24年3月31日

撮影・デザイン:池田理寛

印刷:株式会社 三浦印刷所

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成23年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2011年6月7日〜2012年3月4日の期間に開催された9人の個展の記録集として発行したものです。


<目次>

  • 役重 佳廣 展|天プラ・セレクションVol.37

  • 島村 敏明 展|Kontrapunkt ~対位法~|天プラ・セレクションVol.38

  • 佐藤 安 映像展|middle way|天プラ・セレクションVol.39

  • 石井 司 展|天プラ・セレクションVol.40

  • 高本 敦基 展|Note:日常性の現場から|天プラ・セレクションVol.41

  • 澤田 虚舟 遺墨展|天プラ・セレクションVol.42

  • 小林 泰子 展|時のない森 |天プラ・セレクションVol.43

  • 関野 倫宏 展|干支もの ETO-MONO 〜初春のお喜びを申し上げます。〜|天プラ・セレクションVol.44

  • 光井 威善 展|天プラ・セレクションVol.45


カラー33ページ

税込1,000円


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。