島村 敏明 展|Kontrapunkt 〜対位法〜|天プラ・セレクションVol.38

更新日:27 分前



2011年3月以来、僕らを取り巻く環境は変化し続けている。

僕らの周りには、理解できないこと・想像もできないことが、たくさんあることがわかった。よく耳にした「こころをひとつに」は現在も有効なのだろうか。極端にいえば、僕はわかりあえなくても良いと思っている。そもそも人間は自分以外のことを完全に理解出来たりはしない。でも、だからこそ理解しあいたいとも思うんだろう。「表現」に接することはそのひとつの契機だと思う。

テーマとした「kontrapunkt」は、音楽用語で「対位法」という「旋律をいかに同時的に堆積するか」という観点から論じられる手法。別個の旋律(思想や価値観など)がそのまま同じ五線譜(世界・社会など)の上に存在し、また美しく響き合うこと。そんなふうに考えた。一枚の絵の前で、演奏される旋律の前で、作者が、演奏者が、そして鑑賞する人たちが、それぞれに想い、差異や共通点を見つけ、自分のことを確認しあえる。僕がやっている「美術」はそんな存在だと思っている。

準備期間中は画面に向かうことに違和感を持つこともあった。けれど、2011年の夏に大きな規模の作品発表の機会を得て、同時にそれに併せた音楽会を形にできたことに感謝したい。


島村敏明



タイトルのkontrapunkt(対位法)は音楽用語で、二つ以上の独立した旋律線(声部)を組み合わせて曲を作る多声音楽(ポリフォニー)の作曲技術。そのタイトルに島村の作品を読み解くヒントがある。長い間、絵画は中心点(Mittelpunkt) を持ち、神の位置から見た世界認識の在り方としての遠近法の技術が支配的だった。

今回展示された作品は、そのような一点透視の奥行きとは異なる、キャンバスの表面上に出現する前と後ろの重層的な奥行きを問いかけている。何が描かれているかではなく、どのように作品が作られているか思いを巡らすことも作品を見る喜びの一つとしてある。

平面空間は点描によって埋め尽くされ、オールオーバー的な画面から僅かに形が浮かび上がる。筆のタッチによって何層にも重なった薄い皮膜の層が確認できる。描くというより、オイルで溶かれた絵の具を紙に含ませ一点一点置いていく、その行為の結果として作品が成立している。

図像(フィギュアー)のイメージは、反復、反転、色彩の変換、透明、半透明、不透明、拡大、縮小等の印刷原理やデジタル用語を作品形式として喚起させる。

島村敏明の絵画空間に対する制作思考の展開にこれからも注意を払いたい。

最終日には展示会場にて演奏会が開催され、視覚と聴覚の融和空間を試みた。


天プラ・セレクション推薦委員/版画家 髙原洋一


岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.38 島村敏明展 Kontrapunkt 〜対位法〜

[会期]2011年7月26日(火)〜7月31日(日)

[会場]岡山県天神山文化プラザ 第3展示室


島村 敏明

1976 神奈川県生まれ

2000 京都市立芸術大学美術学部美術学科 油画 卒業

2002 京都市立芸術大学大学院美術研究科 絵画専攻油画 修了


主な個展

2000 「Works」(gallery SOWAKA/京都)

2002 「works」(city gallery/大阪)

2006 「Nightswimming」(奈義町現代美術館/岡山)

2007 「Works」(gallery esprit nouveau /岡山)

2008 「continuous」(gallery esprit nouveau /岡山)

2009 「rhapsody」(gallery esprit nouveau/岡山)

2010 「anthology」(gallery esprit nouveau /岡山)

2011 天プラセレクションvol.38「島村敏明展 – kontrapunkt -対位法-」(天神山文化プラザ/岡山)

2012 「from the 34th parallel」(gallery esprit nouveau /岡山)


主な展覧会

2003 「ニュータウン・アートタウン展」(岡山県山陽団地)

2004 「Drawings/2004」('05年)(gallery SOWAKA/京都)

2005 「京都市新鋭美術選抜展」(京都市美術館/京都)

2005 「Art Court Frontier 05」(Art Court gallery/大阪)

2006 「VOCA展2006」(上野の森美術館/東京)

2006 「6sense」(gallery esprit nouveau /岡山)

2007 「クロスロード・共鳴する美術」(倉敷市立美術館/岡山)

2007 「アートの今・岡山2007」(岡山県天神山文化プラザ、高梁市歴史美術館、奈義町現代美術館/岡山)

2007 「jamin」(’08年、’09年)(gallery esprit nouveau /岡山)

2010 「岡山県新進美術育成I氏賞選考展」(岡山県天神山文化プラザ/岡山)

2011 「the other side of the Moon」(gallery esprit nouveau/岡山)


出品一覧

タイトル|素材/技法/形状|サイズ(cm/縦×横×奥行き)|制作年

kontrapunkt -対位法-|カンバスに油彩|162×338|2011

minor fall|カンバスに油彩|162×112|2011

major lift|カンバスに油彩|162×112|2011

untitled|カンバスに油彩|15.8×22.7|2011

as yet as titled|カンバスに油彩|130×162|2011

code|カンバスに油彩|145×224|2011

k|カンバスに油彩|45.5×53|2011

kの木|カンバスに油彩|130×162(2点組)|2011

urlicht-西-1|カンバスに油彩|15.8×22.7|2011

urlicht-西-2|カンバスに油彩|15.8×22.7|2010

urlicht-庭-|カンバスに油彩|15.8×22.7|2010

lumen|カンバスに油彩|27.3×27.3|2010

urlicht|カンバスに油彩|60.6×50|2010

光の雨|カンバスに油彩|91×116.7(2点組)|2011

rhapsody|カンバスに油彩|64×64|2010

drawings|紙に油彩、他|各62×80(3点)|2005

polaroid drawings|カルトンにアクリル、他|各53×68(14点)|2004〜2011

bach|カンバスに油彩|229×229|2011


 

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本記事は、平成23年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。


編集・発行:岡山県天神山文化プラザ

発行日:平成24年3月31日

撮影・デザイン:池田理寛

印刷:株式会社 三浦印刷所

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成23年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2011年6月7日〜2012年3月4日の期間に開催された9人の個展の記録集として発行したものです。


<目次>

  • 役重 佳廣 展|天プラ・セレクションVol.37

  • 島村 敏明 展|Kontrapunkt ~対位法~|天プラ・セレクションVol.38

  • 佐藤 安 映像展|middle way|天プラ・セレクションVol.39

  • 石井 司 展|天プラ・セレクションVol.40

  • 高本 敦基 展|Note:日常性の現場から|天プラ・セレクションVol.41

  • 澤田 虚舟 遺墨展|天プラ・セレクションVol.42

  • 小林 泰子 展|時のない森 |天プラ・セレクションVol.43

  • 関野 倫宏 展|干支もの ETO-MONO 〜初春のお喜びを申し上げます。〜|天プラ・セレクションVol.44

  • 光井 威善 展|天プラ・セレクションVol.45


カラー33ページ

税込1,000円


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。