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甲田 千晴 展|廻生する森|天プラ・セレクションVol.33

更新日:4月16日



2005年頃から、枯れゆくものの儚さやそこからまた再生される生命など、命が廻るというイメージで制作を続けてきました。2010年の個展は、当館での展示「廻生する森」に加え「蠢動(しゅんどう)する森」「ウゴメク空」というテーマで取り組み、それぞれ地上、地中、空とシリーズで展示をしてきました。大きなひとつのテーマに対して、視点を変えた表現をしてみることで、表現の可能性を探ってみようという試みです。私の中で長く靄がかかっていた気持ちがすっと晴れたような、とても大きな達成感を得られた展示でした。

また、私の作品はすべて陶でできているのですが、成型段階での収縮や乾燥への気遣い、焼成で歪んでしまう等欠点が多い陶を扱うからには、陶を用いる理由が必要だと私は考えています。釉薬や土の原色といった素材としての魅力だけでなく、緊張感のある凛とした空間を表現するために、私が陶を扱うことの有意性を今回少しだけ実感できたように思います。

甲田千晴



我々は潜在的に内蔵している情報を視覚なり聴覚なりの刺激によって表象させる。あまり見たことのない形や色の取り合わせに親近感や好感(または興奮)を覚えるのはそこに自らの持つ記号と何らかの共通項を見いだすからか。その意味で甲田の作品は彼女自身の命と密接につながっているとともに多くの観客が内包しているナニモノかと感応し、様々なエネルギーを生む。それは力であり、喜びであり。彼女の作品は生命の根幹そのものを知覚させるアンテナなのかもしれない。そのような作品を具象と言うべきか抽象と言うべきかよく分からないが、どちらにしてもそこいらに溢れる「作品」と呼ばれる代物とは存在感が違う。

粘土という素材は彼女独特の感性と結びつき、柔らかくまたは堅くその表情を整え、常に細胞が失われ生まれする命そのものを現しているように感じる。言語に変換しては失われかねない根源的なものを密に内包して。言うなれば生命の具象。この真摯な若い作家はこの後何処に向かうのか、まことに楽しみである。

よしもと正人

(彫刻家/天プラ・セレクション推薦委員)

岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.33 甲田千晴展 廻生する森

[会期]2010年9月21日〜9月26日

[会場]岡山県天神山文化プラザ 第3展示室


甲田千晴

1982 岡山県に生まれる

2005 岡山県立大学デザイン学部工芸工業デザイン科 卒業

2006 信楽陶芸の森 アーティストインレジデンス(4ヶ月)

2008 多治見市陶磁器意匠研究所 修了

現在多治見市にて制作


個展

2009 凛枯景想(ギャラリー白/大阪)

2009 甲田千晴展(ギャラリーIDFmini/名古屋)

2010 蠢動する森(ギャラリー陶林春窯/岐阜)

2010 天プラ・セレクション vol.33 甲田千晴展 ―廻生する森(岡山県天神山文化プラザ/岡山)

2010 ウゴメク空(art+cafe Cifa/岡山)

2010 空廻蠢ソラメグリウゴメクモノ(万華鏡ミュージアム姉小路ギャラリー/京都)


グループ展

2005 Creaters File II(Slogadh463/岡山)

2007 CIFACA CIFAKA EXHIBITION(cifa-cafe/岡山)

2007 ヒトハナ展(ギャラリーVOICE/岐阜)

2008 三人展 - 重なる色香 - (ノリタケの森ギャラリー/愛知)

2008 日韓交流陶芸展 "CONTACT act7"(ヘイリー芸術文化村/韓国)

2009 Jamin(エスプリ・ヌーボーギャラリー/岡山)

2009 第六回犬島時間(犬島・旧郵便局舎/岡山)

2010 陶芸の提案(ギャラリー白/大阪)

2010 やきものの現在Ⅵ(ギャラリーVOICE /岐阜)

2010 Naturals,Not By Nature(エスプリ・ヌーボーギャラリー/岡山)

2010 Exhibition of Graguates 受け継ぐもの、作り出すもの,(セラミックパーク MINO1F/岐阜)

2011 陶芸の提案(ギャラリー白/大阪)

2011 Begegnungen ドイツと日本出会いのアート(天理日独文化工房/ドイツ)


賞歴

2005 国際陶磁器展美濃 入選(岐阜県現代陶芸美術館/岐阜)

2005 朝日陶芸展 入選

2006 朝日陶芸展 奨励賞

2006 女流陶芸展 入選

2008 岡山県新進美術育成I氏賞 奨励賞(岡山県天神山プラザ/岡山)


出品一覧

タイトル|素材/技法/形状|サイズ(cm/縦×横×奥行き)|制作年

凛枯景想|陶|185×60×55|2009

静止した時間Ⅰ|陶|75×80×25|2009

静止した時間Ⅱ|陶|65×45×20|2010

静止した時間Ⅲ|陶|70×45×25|2010

静止した時間Ⅳ|陶|75×50×30|2010

廻生|陶、金粉|45×25×16|2009

廻生|陶、金粉|40×18×15|2009

種虫|陶|32×20×18|2010

枯鳥(こちょう)|陶|60×75×16|2010

小枯鳥(ここちょう)|陶|28×45×15|2010

蠢木(うごめき)|陶|90×60×30|2008

蠢木(うごめき)|陶|160×55×40|2008

蠢木(うごめき)|陶|155×55×40|2008

空(くう)|陶、上絵顔料、シャモット|135×30×35|2010

空止|陶、上絵顔料、シャモット|85×25×25|2010

空座|陶、上絵顔料、アクリル、シャモット|65×60×55|2010

呼吸のカケラ|陶|5×10×8|2010

呼吸のカケラ|陶|5×8×6|2010

呼吸のカケラ|陶|3×6×6|2010

石生虫|陶、シャモット|18×15×12|2010

石生虫|陶、シャモット|12×10×8|2010

 

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本記事は、平成22年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。


編集・発行:岡山県天神山文化プラザ

撮影:青地大輔[ブルーワークスPHOTO&DESIGN Office]

発行日:平成23年3月31日

デザイン:ブルーワークスPHOTO&DESIGN Office

印刷:株式会社 みつ印刷

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成22年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2010年7月6日〜2011年4月3日の期間に開催された8人の個展の記録集として発行したものです。


<目次>

  • 青地 大輔 写真展|犬島時間|天プラ・セレクションVol.29

  • 平井 健三 展|匂い vol.1Wシリーズ|天プラ・セレクションVol.30

  • 柴田 れいこ 展|Sakura さくら|天プラ・セレクションVol.31

  • 加藤 直樹 陶展|ナオキショウDX|天プラ・セレクションVol.32

  • 甲田 千晴 展|廻生する森|天プラ・セレクションVol.33

  • 大月 理恵 展|dream garden|天プラ・セレクションVol.34

  • 池田 理寛 写真展|Afterimage|天プラ・セレクションVol.35

  • 生誕100年記念 大館桂堂 遺墨展|天プラ・セレクションVol.36


カラー30ページ

税込1,000円


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。

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