青地大輔 写真展|犬島時間|天プラ・セレクションVol.29



犬島は、岡山市の南東、宝伝地区の沖合い約2.8kmにある周囲約3.6kmの小さな島で、岡山市内にある唯一の有人島だ。犬島本島と犬ノ島、地竹ノ子島、沖竹ノ子島、沖鼓島、白石島の6つの島々からなっており、有人島は本島のみとなっている。古くから良質の花崗岩の産地として、全国に知られている島で、岡山城、大阪城、江戸城などでも犬島産の石が使われている。明治から大正にかけては、銅精錬所が操業し、およそ4,000人が生活する活気のあふれた島であった。ところが、銅精錬所の閉鎖を境に徐々に人口が減りはじめ、現在はレンガづくりの廃墟と多くの空家を残して、平均年齢65歳、約60名が暮らすばかりの島となった。犬島は映画のロケ地としても数多く使われており、2000年以降は様々なアートイベントが行われた。そして2004年、私が企画しているアートプロジェクト犬島時間がスタートすることになった。2008年には銅精錬所跡にアートプロジェクト「精錬所」がオープン。家プロジェクトも随時オープンし、アートの島として活気づきはじめている。

私が犬島の存在を気にしはじめたのは1999年ごろだったと思う。まだ島に足を運ぶことなく対岸で写真を撮っていた頃だ。偶然フィルムに写り込んでいた犬島の煙突のシルエットが気になり、知人に話しをしたことが犬島に足を運ぶきっかけとなった。当時は、現在のように美術館もなく、ほとんど人が訪れることのない場所であった。廃墟となった犬島 銅精錬所跡と昔懐かしい時間が止まったような日本の原風景が印象的な場所であった。 初めて見る銅精錬所跡は、何とも言えないほどに引きつけられるものを感じた。犬島に通いはじめの頃は銅精錬所跡ばかりに足を運んでいたが、急にそこが動いていた頃の風景を見たくなり、民家を尋ねてまわった。犬島について何も知識を持ってなかった私には大変な作業であった。その結果、沢山の資料や古い写真を収集することができ、犬島について色々と学ぶことができた。島の人達は、とても暖かく親切で色々なことを教えてくれた。そのことがきっかけで興味の対象が廃墟から過去の風景→集落→犬島そのものへと変化した。島の人達をふくめ犬島そのものが好きになったのだ。もはや第二の故郷と言っても過言ではない。

犬島時間という言葉は、考えてつけたものではなく、島に滞在しているうちに自然に浮かんできた言葉だ。島の本質=そこで暮らす人達なのだ。それに気がついたときに“犬島時間”という言葉が自然に浮かんできたのだ。

犬島と関わり10年以上の時間が経過した。その時間の中には、もう出会うことができなくなってしまった人や景観がある。今後もこの島がどのように変化していくのかファインダー越しに見続けたいと思う。


青地大輔



青地大輔と出会ってかれこれ10年近くになる。彼は奈義町現代美術館での個展以降、犬島に興味を持ち、何年も掛けて島民との地道なコミュニケーションを重ねてきた。本展は、彼の犬島への愛着が詰まった展覧会となった。2004年以降の青地にとって、犬島(岡山市唯一の有人島は瀬戸内国際芸術祭などで国際的な注目を集めている)での撮影は彼のライフワークともいえるが、本展では島の日常など、厳選された8点の画像を数台のプロジェクターを用いて巨大スクリーンに紹介してみせた。それは島民との地道なコミットを続けて来た者のみが演出できる展覧会だった。展示空間全体を覆い尽した巨大な画像は、観る人に優しく語りかけ、包み込む。島のシンボルとしての精錬所煙突、島の老人のさり気ない暮らしぶりや表情、そして最後にデッキを覆う雑草が郷愁を誘う。

犬島にそびえ立つ精錬所跡の煙突は、いわば島のアイコンであり、シンボルである。一般的にはそれが表層的な島の「姿」として通用している。しかしそれは「イヌジマ」の表舞台であって“真実”の犬島の姿ではない。そこに生きている人たち、島民の普段の表惰、暮らしや何気ない風景を通じて初めて真の犬島が見えてくる。彼は経過していった時間―島民との出会いと別れ―を、「線」として展覧会まで繋げてみせた。「犬島時間」の「実感」を通して、その間成長してきた自らの内面とを重ねて投影させているようにも感じた。

岸本和明

(奈義町現代美術館 副館長/天プラ・セレクション推薦委員)

岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.29 青地大輔 写真展 犬島時間

[会期]2010年7月6日〜7月11日

[会場]岡山県天神山文化プラザ 第2展示室


青地 大輔

1973 岡山市に生まれる 岡山市在住

1992 岡山県立岡山一宮高校 卒業

1996 福山大学工学部電子・電気学科 卒業

2005 ブルーワークス PHOTO & DESIGN Office 設立


主な個展

2000 HIT OGENOME(room op8/岡山)

2001 MINDSCAPE(room op 8 /岡山)

2002 Consciousness(gallery ARTE /香川)

2003 青地大輔展(奈義町現代美術館/岡山)

2003 WATER(立体ギャラリー射手座/京都)

2005 青地大輔展〜ソラヲオヨグ〜(slogadh463 /岡山)

2005 青地大輔写真展(ホワイトキューブ OSAKA/大阪)

2005 DROP OF WATER(公文庫カフェ/岡山)

2006 lost articles of the moon(gallery YOSHI/ L)

2006 Poisson Rouge(Galeria Punto/岡山)

2006 A place with water(テトラヘドロン/岡山)

2007 My turning into me(カフェゼット/岡山)

2008 synchronicity(gallery 月夜と少年/大阪)

2008 The World(カフェゼット/岡山)

2010 青地大輔展 Birds in the room(cifa/岡山)

2010 青地大輔写真展 Glimmer border(cifa/岡山)

2010 ねこだまり 青地大輔写真展(カフェゼット/岡山)

2010 天プラ・セレクションvol.29 青地大輔 写真展―犬島時間(岡山県天神山文化プラザ/岡山)


主なグループ展

2002 犬島アーツフェスティバル(犬島/岡山)

2003 4×4展(gallery ARTE/香川)

2004 assemblage 展(Atelier Live/岡山)

2005 アートリンクプロジェクト 2005 (slogadh463/岡山)

2006 玉井宮・東照宮龍神祭(玉井宮/岡山)〜09年

2006 アートプログラム(岡山市民病院/岡山)

2006 コラボレーション・ポエム 2006(岡山県天神山文化プラザ/岡山)

2007 アートフルナイト in 奈義 MOCA(奈義町現代美術館/岡山)

2007 出石芸術百科街(出石町/岡山)~09年

2008 Utsubo Photo Festival 2008 (gallery 月夜と少年/大阪)

2008 アートの今・岡山展 (岡山県天神山文化プラザ・高梁市歴史美術館・奈義町現代美術館/岡山)

2009 写真家・中村昭夫の原点、1956-1964/共鳴する美術2009―表現への挑戦―(倉敷市立美術館/岡山)

2010 FUKUYAMA ART WALK 2010(福山市立美術館・福山城/広島)


その他

2004〜 アートプロジェクト犬島時間を企画・プロデュース(犬島/岡山)

2005 ふうりん電車(岡山電気軌道路面電車/岡山)

2008 島会発足記念シンポジウム(エネルギアホール/岡山)

2009 アートプロジェクト大島時間が岡山芸術文化賞功労賞を受賞

2010〜 写真教室(カフェゼット/岡山)


書籍

SORAの家 家族で楽しむソラマド暮らし/幻冬舎ルネッサンス


出品一覧

タイトル|素材/技法/形状|サイズ(cm/縦×横×奥行き)|制作年

犬島時間|プロジェクター、DVD|可変(サイズ・点数)|1999-2010

 

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本記事は、平成22年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。


編集・発行:岡山県天神山文化プラザ 撮影:青地大輔[ブルーワークスPHOTO&DESIGN Office]

発行日:平成23年3月31日

デザイン:ブルーワークスPHOTO&DESIGN Office

印刷:株式会社 みつ印刷

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成22年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2010年7月6日〜2011年4月3日の期間に開催された8人の個展の記録集として発行したものです。


<目次>

  • 青地 大輔 写真展|犬島時間|天プラ・セレクションVol.29

  • 平井 健三 展|匂い vol.1Wシリーズ|天プラ・セレクションVol.30

  • 柴田 れいこ 展|Sakura さくら|天プラ・セレクションVol.31

  • 加藤 直樹 陶展|ナオキショウDX|天プラ・セレクションVol.32

  • 甲田 千晴 展|廻生する森|天プラ・セレクションVol.33

  • 大月 理恵 展|dream garden|天プラ・セレクションVol.34

  • 池田 理寛 写真展|Afterimage|天プラ・セレクションVol.35

  • 生誕100年記念 大館桂堂 遺墨展|天プラ・セレクションVol.36


カラー30ページ

税込1,000円


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。