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妹尾 佑介 展|VIVID!|天プラ・セレクションVol.74

更新日:4 日前




会期初日、小学生くらいの子供たちが会場にきて、

長い時間、不思議そうに絵を眺めていた。

最近、創造へのモチベーションの根源は、

他者の心に干渉したいという欲求ではないかと、ふと思った。

今回の展覧会は、どれほどの人の心に干渉できただろう。


私の絵は、日常の中の、ささやかな、

せいぜい自分の半径3メートル以内にあるものの中に、

心動く何かがあるはずだというひとつの提案だ。

日常の中に美しいものがないのではなく、

ひょっとしたら自分が美しいと思えていないだけかもしれない。

いま見ている景色の中に心動くきっかけがあるかもしれない。


そんな風に思えたら、もう少しだけ世界はvividになるはず…。


妹尾 佑介



Exhibition Review

「風船の絵」で山陽新聞社賞を受賞し、一躍注目されるようになった妹尾祐介の個展である。三原色に緑や紫を加えたカラフルな色彩は会場を明るくし、まさに今回のテーマである「ビビッド」にふさわしい。それでいて突出効果満点の画面は、圧迫感で見る者を息苦しくさせる。

また、極めてあっけらかんとした印象の画面ではあるが、大きさのせいか、軽薄でストレートな画面の裏側に何もないように見せかけて、作者なりの文明批評が潜んでいるようにも思える。

ロープやガムテープで縛られた風船に、自由の束縛を見た人がいるかもしれないし、最新作の《シグナル》に管理社会の現実を思い出した人がいるかもしれない。今がピークの張り切った風船に、はかなさを感じ取る人もいるかもしれない。

それまでシュルレアリスム風のロマンチックな構想表現を試みていた妹尾に、作風の転機をもたらしたのは、19世紀後半のアメリカン・リアリズム絵画である。とりわけハーネットやピートに代表される「だまし絵的な静物画」が、彼の心を捉えた。浅い空間の中に卑近なモチーフを配置して精密描写するそのスタイルは、ヨーロッパで発展した静物画の持っている堂々とした風格とは異なる卑俗な魅力を持っている。後にその伝統からポップ・アートが生まれたことを思えば、巨大な風船や果物を描く妹尾の画面にも、皮相的なポップ・アートのにおいがするのもうなずけるし、そのポップ・アートから生まれたスーパー・リアリズムの世界も、妹尾絵画とはもともと近しい関係にある。

この手の絵画では巨大な「なま玉子の絵」を描く上田薫が有名である。上田は「卵が割れる瞬間」という緊張感のある要素を画面に導入して、アメリカのスーパー・リアリズム絵画との差異化を図った。このストップモーションと張り合えるような要素を、今後妹尾が画面に取り込めるのか、そのあたりが短い風船の寿命を延ばす秘訣のような気がする。


天プラ・セレクション推薦委員/画家、岡山大学大学院 教授 泉谷 淑夫


岡山県天神山文化プラザ企画展 天プラ・セレクション Vol.74 妹尾 佑介 展 VIVID!

[会期]2016年8月16日〜21日 [入場無料]

[時間]9時〜18時(最終日は17時まで)

[会場]岡山県天神山文化プラザ・第3展示室


妹尾 佑介 Yusuke Seno

1988 岡山県生まれ

2012 岡山大学大学院 教育学研究科 修了


現在 岡山県在住

一陽会 会友


個展

2016 天プラ・セレクションVol.74「妹尾佑介展 VIVID!」(岡山県天神山文化プラザ)


グループ展

2011 陽のあたる岡(アートガーデン、岡山県天神山文化プラザ /岡山)[以後毎年]

2013 第6回 岡山県新進美術家育成 I氏賞選考作品展(岡山県天神山文化プラザ)


賞歴

2011 第62回 岡山県美術展 山陽新聞社賞 受賞

2011 第23回 しんわ美術展 銀賞 受賞

2012 第50回 関西一陽展 関西一陽賞 受賞

2012 第58回 一陽展 特待賞 受賞

2014 第60回 一陽展 一陽賞 受賞


出品一覧

タイトル|素材/技法|サイズ(cm)|制作年 いのちの風景|油彩・キャンバス|162×130|2010

いのちの風景|油彩・キャンバス|162×130|2010

|油彩・キャンバス|91×91|2010

沈みゆくもの|油彩・キャンバス|162×130|2011

|油彩・キャンバス|162×130|2011

紙飛行機と風船|油彩・キャンバス|53×45.5|2011


飽和|油彩・キャンバス|116.7×91|2011

BALLOON Ⅰ|油彩・キャンバス|162×162|2012

BALLOON Ⅱ|油彩・キャンバス|162×162|2012

BALLOON Ⅲ|油彩・キャンバス|162×162|2013

BALLOON Ⅳ|油彩・キャンバス|162×162|2015


Limit|油彩・キャンバス|91×91|2011

蜜柑|油彩・キャンバス|116.7×91|2013

LEMON|油彩・キャンバス|194×162|2014

生命|油彩・キャンバス|116.7×91|2014

生命|油彩・キャンバス|91×91|2014

LEMON|油彩・キャンバス|116.7×91|2014

生命|油彩・キャンバス|227.3×181.8|2015

Signal|油彩・キャンバス|145.5×291|2016


 

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本記事は、平成28年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクションVol.74 妹尾佑介展 記録集より抜粋しています。掲載内容は発行時点のものです。


発行:岡山県天神山文化プラザ

発行日:平成29年1月31日

印刷:株式会社 三浦印刷所

編集:福田淳子[岡山県天神山文化プラザ]

デザイン:鳥越眞生也[鳥越屋]

撮影:加賀雅俊[べあもん]

照明:池田正則[岡山県天神山文化プラザ]

 

<記録集をご希望の方は、天神山文化プラザ文化情報センターにてご購入いただけます>


平成28年度 岡山県天神山プラザ企画展 天プラ・セレクション 記録集

岡山県天神山プラザ企画展「天プラ・セレクション」として2016年4月12日〜2017年4月2日の期間に開催された5人の各展覧会の個別の小冊子を合本し、1年間の記録集として発行したものです。


<目次>

  • 眞嶋 青 展|museum|天プラ・セレクションVol.72

  • 藤井 龍 展|For( Your/His/Her/My)Eyes Only|天プラ・セレクションVol.73

  • 妹尾 佑介 展|VIVID!|天プラ・セレクションVol.74

  • 有松啓介ガラス作品展|ガラスでしりとり遊び|天プラ・セレクションVol.75

  • 安中 仁美 展|ささやかな備忘録|天プラ・セレクションVol.76


カラー44ページ

税込1,000円


※各展覧会の個別の小冊子も発行しています(カラー8ページ/税込200円)


お問い合せ

〒700-0814 岡山市北区天神町8-54岡山県天神山文化プラザ

TEL 086-226-5005

FAX 086-226-5008

メール tenplaza@o-bunren.jp

受付時間 9:00~18:00

休館日 月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)

 

「天プラ・セレクション」シリーズは、岡山県ゆかりの作家を選抜し個展形式で紹介する、天神山文化プラザの企画展シリーズです。 開催作家の選考は、推薦と公募の2部門から行います。

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